広島訪問のオバマ氏、「道徳革命」呼びかけ 被爆者と抱擁
(CNN) 被爆地広島を現職の米大統領として初めて訪問したオバマ大統領は27日、平和記念公園で演説を行い、核技術を可能にした科学革命には「道徳革命」も伴わなければならないと訴えた。演説後には被爆者の男性と抱擁を交わす場面もあった。
オバマ氏は平和記念公園で献花した後、厳粛な表情で所感を述べた。原爆投下当日の「閃光(せんこう)と火の壁」が街を破壊し、死者を悼むためにこの地に来たと述べた上で、「彼らの魂がわれわれに語りかけてくる。内面を見つめ、我々が何者であり今後何になっていくのかを思索するように求めている」と語った。
「歴史のまなざし」を直視する「共通の責任」がわれわれにはあるとも言及。核兵器が再び使われるのを防ぐには何をすべきかと問いかけ、「核分裂を可能にした科学革命には道徳革命も伴うことが求められている」「だからこそわれわれは広島を訪れるのだ」と語った。
また、無意味な戦争に終止符を打つことも呼びかけた。「広島と長崎で厳しい終結を迎えた世界大戦は、世界で最も豊かで強力な国々のあいだで戦われたものだ」と指摘。こうした文明は偉大な都市や芸術などを生み出す一方、戦争は支配を求める基本的本能から生まれてきたものだとの見方を示した。
そして「世界はこの場所で永遠に変わった。だが今日、広島の子どもたちは1日を平穏のうちに過ごしている。これは素晴らしいことだ。守る価値のあるものだ」と締めくくった。
広島に投下された原爆では、10万人を超える日本人や数千人の韓国人に加え、当時捕虜となっていた米兵十数人も死亡した。
オバマ氏は演説の後、被爆者の人々と面会。原爆で死亡した米兵12人が公式に認知されるよう40年にわたり求めてきた森重昭さん(79)と感情のこもった抱擁を交わした。
平和記念公園での式典の前、被爆者の坪井直さんは「生きている間に大統領が来るとは思わなかった」と述べ、大統領の謝罪は不要だと語った。ただ、大統領には広島で人類の幸福に資するものが何かを示すことを希望しており、憎悪を乗り越え理性の力で互いに手を携えていきたいと語った。