捜査資料で名指しされている2人のメンバーは、パリ同時テロの実行犯に加わることになっていた。アルジェリア出身のアデル・ハッダディ容疑者と、パキスタンの過激派組織で爆弾製造を担当していたとされるムハンマド・ウスマン容疑者だ。
両容疑者はパリ同時テロの6週間前に、ISISが首都と称するシリア北部ラッカを出発した。この時の4人グループのうち残る2人は、テロ実行犯としてパリ郊外のスタジアムで自爆することになる。一行は10月初めにトルコへ越境し、同国の海岸部へ向かった。
4人は互いの本名も、自分たちの最終的な任務も知らされていなかったとみられる。ハッダディ容疑者は調べに対し、当時分かっていたのは「神のために何かをする」目的でフランスへ送り込まれるということだけだったと述べた。
まず、テロ実行犯がソーシャルメディアを盛んに活用し、通信内容の多くが暗号化されていること。正体を隠すために自分の電話番号を自由に選べるアプリも使われていた。
グループに指示を出していたのは「アブ・アハマド」と呼ばれるISIS幹部だった。外国人実行犯らを勧誘して訓練し、パリへ送り込んだ中心人物とみられる。この人物がハッダディ容疑者ら4人にも遠隔操作で車や携帯電話、シリアの偽造パスポートなどを手配した。正体不明の仲介人を通して資金を渡し、暗号化アプリで連絡を取っていた。
4人はシリア難民を装い、トルコ西部イズミルからボートでギリシャへ向かった。この時にハッダディ、ウスマン両容疑者がギリシャ海軍に拘束され、手持ちの資金を取り上げられた。残る2人はそのままパリをめざしたが、両容疑者はここで1カ月近く足止めされたため同時テロには間に合わなかったようだ。