孤立し見捨てられ 中国農村部の高齢者、その悲痛な現実
チンさんの問題は、数百万の家族が直面する状況を映し出している。急速な高齢化が進むなか、多くの老人は国や子どもの支援を受けられるか確信を持てていない。
中国労働当局によると、2050年までに国民の34%以上が60歳以上になると予想されている。数にして約5億人で、今日の2倍近い。
労働年齢人口減少の影響は甚大かつ広範なものになる可能性がある。専門家は長年、高齢化が経済成長の足を引っ張り、中国が「金持ちになる前に老いる」恐れがあると警鐘を鳴らしてきた。
国庫に貢献する労働者の数が減るなか、財政の圧迫はますます進みそうだ。
高齢者への対応で手一杯になりそうなのは政府だけではない。一部の研究からは、国民の側でも引退に向けた貯金が不十分な現状がうかがえる。
中国財務省によると、2017年末時点での中国人労働者の貯金は合計1兆ドル(約110兆円)ほど。60歳超の1人につき約4000ドルという計算で、間もなく数億人の退職者を抱える国にとって十分な額とは言えないだろう。
貯金不足の一因は文化にある。中国社会では伝統的に、高齢者は家族に頼って引退後の生活を補ってきた。
年老いた親類に対しては子どもや孫が資金援助するものと想定されている。しかし若者の数が減るなか、こうした世代への負担は耐えがたい水準になりつつある。