ロシアの船舶型原発が初の航行へ出港、安全に懸念も
(CNN) ロシアが開発していた洋上で発電業務に当たる船舶型の原子力発電所「アカデミク・ロモノソフ」が23日、ロシア北部ムルマンスク港から北極海での初の航行に出発した。
4~6週間かけて約3100マイル(約4989キロ)離れたペベク港を目指す。全長144メートルの同船の開発はロシアで最も離れた遠隔地の1つされるチュコト地方で集落や天然資源採取に当たる企業への電力供給が目的。事業が順調に進めば、世界の最北端の場所で稼働する原発となる。
また、プーチン・ロシア大統領が推進する地政学的に大きな影響を持つ野心的な北極圏開発に寄与するともみられる。同船の事業は国営原子力企業ロスアトムが担っている。
ロシア北部ムルマンスク港からペベク港を目指す/Henrik Pettersson, CNN
ただ、同船開発には環境団体などから反発が強く、「浮かぶチェルノブイリ」などとの酷評も受けている。東京電力福島第一原発事故に絡め、洋上の原子炉稼働のリスクに警鐘を鳴らす指摘もある。
遠隔地で稼働するアカデミク・ロモノソフの機動性や能力は一部の不可欠な安全対策の問題を複雑化するとの見方もある。核燃料の通常的や処理方法や大規模な波に襲われた場合の救助作業の在り方などに触れている。
船舶型の原子力発電所「アカデミク・ロモノソフ」の中央制御室/Rosatom
ロシア北端部の村落近くでは最近、ミサイル実験の失敗で放射性物質のレベル上昇が指摘され、放射能汚染に対する懸念がロシア国内で高まってもいた。
ロスアトムの事業担当者は、福島第一原発事故の教訓は学習しており、同船は津波に耐えられる船体構造になっていると強調した。
内部で建造の仕上げをする作業員/Rosatom
ロシアの北極海沿岸の村落や町の住民は約200万人。シベリア地方の資源の先細りが懸念される中で隠れた資源が眠る地域との期待もある。