ミャンマー軍が国家権限掌握、事実上のクーデター 米は措置を警告
(CNN) ミャンマー軍は1日未明、与党・国民民主連盟(NLD)のアウンサンスーチー国家顧問やその他の複数の幹部を拘束し、国軍トップに国の実権を与えた。こうした動きに対して、米ホワイトハウスは進展が元に戻らなければ責任者に対し措置を講じると警告を発した。
ロイター通信によると、ミャンマー軍は軍営テレビのミャワディ・テレビで、選挙不正への対応として政治指導者の重要人物を拘束し、非常事態宣言を発令したと発表した。実権はミンアウンフライン国軍総司令官に与えられたという。
軍の発表は議会の新たな会期が始まる直前に行われた。ここ数日間は政治的緊張が高まり、軍によるクーデターへの懸念が高まっていた。
NLDの報道官はCNNに拘束は事実だと確認。「アウンサンスーチー国家顧問とその他の幹部が何人か(首都の)ネピドーで拘束されている。軍が首都を掌握したようだ」と述べた。幹部にはシャン州やカヤー州の閣僚などが含まれているとも明らかにした。
ミャンマーの主要なニュースチャンネルは1日午前、放映を停止した。商業の中心都市ヤンゴンでは市庁舎の前に軍兵士の姿が見られた。
軍の報道官は先週、軍が昨年11月の総選挙に関して訴えている投票不正の調査が行われなければ、クーデターも排除しないと発言。軍は「存在しない投票者といった不正の可能性」のあるケースが1050万件に及ぶと述べ、選挙委員会に対し最終的な投票データを公開するように求めていた。
NLDは民政移行後2度目となる総選挙後に得票率83%で圧勝したと宣言。軍が支援する連邦団結発展党は476議席中33議席にとどまり、同党の獲得予想に及ばなかった。
選挙委員会は1月28日、投票の不正があったとの主張を却下。有権者登録に氏名が重複するなどの誤りは選挙結果に影響を及ぼすほどの規模ではなかったと述べた。
29日には国連のグテーレス事務総長がミャンマーの最近の情勢に「大きな懸念」を示し、全ての当事者に民主主義の規範順守と11月8日の総選挙の結果の尊重を呼び掛けた。
同日には米国や英国、欧州連合(EU)など同国にいる世界16カ国の外交団が共同声明を発表。選挙結果を覆そうとしたり民政移行を阻害したりするような試みに反対した。
米ホワイトハウスのサキ報道官はミャンマー国内の動きを受け、バイデン大統領がサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)から状況の報告を受けたとの声明を発表。「もし今回の進展が元に戻らなければ、米国は責任者に対して措置を講じる」と述べた。
米国は既に2019年12月にミン・アウン・フライン国軍総司令官を制裁の対象としている。理由はイスラム教の少数民族ロヒンギャに対する残虐行為に関連する重大な人権侵害としている。
オーストラリア外務省も1日、スーチー氏や幹部らの即時釈放を求める声明を出した。
人権NGOの「バーマ・ライツ・UK」は1日、ツイッターへの投稿で、スーチー氏拘束の知らせは「衝撃的だ」と述べ、国際社会に強い対応を呼び掛けた。
スーチー氏は「建国の父」とうたわれ暗殺されたアウンサン氏の娘で15年にわたる自宅軟禁を経験。ミャンマーの民主主義の英雄と多くの人々から位置付けられている。
50年続いた軍政後に行われた2015年の総選挙でNLDは地滑り的な勝利を収め、スーチー氏は同国の事実上のリーダーとなった。憲法上の制約で大統領にはなれないため、国家顧問という役職が作られ就任した。
ただ、近年はロヒンギャに対するジェノサイド(集団殺害)の主張により、スーチー氏の国際的な名声は輝きを失った。ミャンマーはそうした主張を否定し、標的はテロリストだと反論している。