目撃者が語るミャンマー軍の殺戮、市民を容赦なく標的に
一方、バリケードから遠く離れた自宅にいた医師は、重火器の音で目を覚ました。医師が身の安全を理由に匿名で明かしたところによると、近くの家にデモ参加者が1人、逃げ込むのを見たという。後に続いて侵入した治安部隊は、家主とその息子を引きずり出し、金属の棒で彼らを殴打した。2人は軍に連れていかれ、その後音沙汰がないと医師は話す。
医師が状況を携帯電話で撮影しようとすると軍がこれを見つけ、自宅に発砲してきた。軍は「ディフェンス・チーム」を支援する家を取り締まっていた。住民の中にはデモ参加者に食べ物を与えたり、銃で負った傷に治療を施したりする人たちがいたからだ。
自分のところにもデモ参加者が治療を求める電話をかけてきたが、軍が一日中家の周囲にいるので出られない。電話越しに手当ての方法を説明することしかできなかったと、医師は振り返る。
やはり身元を明かさず取材に応じたある活動家は、現場に居合わせただけの人も射殺されていたと証言。家族が遺体を回収しようとしたが、あまりに激しい銃撃のためそれもできず、事態が鎮静化した後でようやく遺体を自宅へ運び、密かに埋葬していたという。
またもう1人の医師は、幹線道路のバリケード付近で人々が負傷するのが見えたものの軍に阻まれ治療に向かえなかったと話した。さらには、そばで見ていた人の頭部に銃弾が撃ち込まれるのも目にした。地面に倒れたその人は、見たところ18~19歳の若者だったという。
2月1日のクーデター以降実権を握る軍事政権は、現地での状況についてかなり異なった主張を展開している。
軍の支配下にある新聞はバゴーでの武力行使から1日後の紙面で、「治安部隊が暴徒の集団から攻撃を受けた。部隊は暴徒らが市内に築いた路上バリケードを撤去中だった」と報道。数十人の集団を形成する暴徒らは自家製の銃や火炎瓶、手榴弾(しゅりゅうだん)などで治安部隊に襲い掛かったとした。