「我々が選んだわけではない」 ウクライナ戦争の理解に苦しむロシア国民
ロシアの大富豪の1人で、ウクライナ生まれの実業家ミハイル・フリードマン氏は、今回の暴力を「悲劇」と呼び、「戦争は決して答えにはならない」とも述べた。ただし、英紙フィナンシャル・タイムズによると、フリードマン氏はプーチン大統領を直接批判するまでには至らなかった。
「もし私がロシアで受け入れられないような政治的発言をすれば、会社や顧客、債権者、利害関係者にとって非常に明確な影響を与えるだろう」と同氏は述べた。
別のオリガルヒ(新興財閥)のオレグ・デリパスカ氏は、「平和はとても重要だ! できるだけ早く会談を始めるべきだ」とテレグラムの自身のチャンネルに投稿した。
一方、ロシアの「インテリゲンチャ(知識人)」、つまり学者や作家、ジャーナリストなどは、戦争を非難する公の訴えを出している。ロシアの政府や外交官エリートの大半を輩出している外務省付属の名門モスクワ国際関係大学の学生、教員、スタッフ1200人が署名したプーチン氏への珍しい「公開書簡」などがそれだ。
署名した人々は、「ロシア連邦のウクライナにおける軍事行動に断固反対する」と明白に主張している。
「隣りの国で人が死んでいるのに、傍観し、黙っていることは道徳的に許されないと考える。平和的な外交ではなく武器を選んだ人々の責任で、彼らは死んでいる」と書簡には書かれている。
公には、ロシアの外交官はクレムリンと歩調を合わせているが、米紙ワシントン・ポストによると、気候変動に関する国連会議のロシア代表団の代表オレグ・アニシモフ氏は「この紛争を防ぐことができなかったすべてのロシア人に代わって」軍事作戦について謝罪し、「何が起きているかを知っている者は、攻撃の正当性を見つけることができない」と付け加えた。
しかし多くのロシア人は、実際、ウクライナで何が起こっているのかを十分に知らない。国営テレビは、キエフや他のウクライナの都市でのロシアの爆撃や砲撃の様子をほとんど報道せず、代わりにいわゆるウクライナの「愛国主義者」や「ネオファシスト」を取り上げている。
ロシア軍がウクライナに進駐してからおよそ1週間、多くのロシア人は、戦争が実際に起こっているという事実をまだ受け止めていない。米国をはじめとする西側諸国は、数週間前から攻撃が始まることを警告していたが、侵攻が始まる前に行われたCNNの世論調査では、ロシアの攻撃がありそうだと考えたロシア人はわずか13%で、3人に2人(65%)がロシアとウクライナの緊張が平和的に解決すると予想していた。