ロシア側のリスクの高さ
ロシア軍がはるかに強大であること、北大西洋条約機構(NATO)が直接の関与や飛行禁止区域の設定を嫌がっていること、そして戦争が長引くほどウクライナが致死性の武器供給で味方への依存度を高めることは依然として事実だ。
前述のアントロバス氏は、戦争がどれほど続くかは、プーチン氏がこの勝利にどれほどの戦力を投入するのか、またシリア内戦のアサド政権支援でロシア軍が行った戦術を繰り返すかどうかに一部かかっているとの見方を示す。
「彼(プーチン氏)がアレッポの再現をして、世界にこれほど見える形で残虐行為に及ぶ意思があるのか。シリア内戦の最悪の日々は紛争が始まって数年後に発生し、悲しいことに人々は注意を払わなくなっていた。今回の戦闘は始まってまだ3週間だ」(アントロバス氏)
同氏は、プーチン氏がシリアのような極限状態まで行くと決めれば、ロシアのリスクはより高まることになると語る。「ウクライナが保有し、また供給を受けようとしている防空武器があるからだ」という。
また同氏は、ロシアが中長期の検討をしなければならない状況にあるとの認識も示す。装備や人員の面で、他の利益の代償にどれほど多くを失う意思があるのかという点についてだ。
同氏は「こうした行為の中で自国の戦闘機をこのレベルの危険性に置き、ロシアの資源を費やしていくことは、正当化が非常に難しいものとなるだろう」と語る。
ウクライナの制空権を握るために許容でき、耐えうる喪失というのがどの程度なのかは不明だ。
英国王立防衛安全保障研究所のリサーチフェロー、ジャスティン・ブロンク氏は、ロシアが「ウクライナの大半において十分な制空権を握るためには、擁護しようのない損失を被ることが避けられない」と考えている。
「ロシア空軍に、この任務で求められる大規模で複雑な航空作戦を実施する能力があるという証拠はほとんどない」(同氏)
ロシアが制空権を得ようとする戦いは、ある面、地上をどの程度支配しているかによっても左右される。テラス氏は「ロシアが攻撃の大半をウクライナ国外から行っている限り、ウクライナの広大な領空を現実的に支配できる程度には限界がある」と語る。
ロシアはウクライナ国内の標的に対するミサイル攻撃を行う多くの場面で、ウクライナ国外から爆撃機を発進させなければならない状況にある。
テラス氏はまた、ウクライナ軍が国内のどの戦略的部分を守るのかの選択で賢明な判断をしているとも述べた。