南国の楽園でトラブル、戦禍を逃れてきたロシア人とウクライナ人にバリ島も我慢の限界
「みな上手くやっている」
バリ島は戦争以前からロシア観光客の人気スポットだったが、プーチン大統領の長引く侵攻やその後の動員の動きで、その人気はますます高まるばかりだ。
東南アジアの避難場所はここだけではない。しばしば世界最高のビーチリゾートに挙げられるタイ南部のプーケット島にも、ロシア人が相次いで訪れている。大半は長期滞在を視野に不動産投資をしてきた人々だ。プーケットの旧市街近くにアパートを購入したサンクトペテルブルクの元投資銀行家はCNNに「ロシアの生活はこことはまるで違う」と語った。この男性はロシア当局の報復を恐れて身元は明かさなかった。
男性は「誰も戦争のまっただ中で暮らしたくはない。ロシアに送還されて罰を受ける可能性を考えると、気が重い。(だから)モスクワよりも生活費が安くて、安全な場所に投資するのは理にかなっている」と述べた。
バリは、インドネシア政府が80カ国以上の国民に入国時のビザ申請を認める政策を取っている点も魅力のひとつだ。今のところロシアとウクライナもこれに該当している。ビザの有効期限は30日だが、1回まで延長が認められ、合計60日間滞在できる。
長期休暇を計画する人々には十分すぎる時間かもしれないが、さらに長期の滞在を望んでも、就労は認められない。インドネシア当局によれば、この数カ月で複数のロシア人観光客がビザの期限切れで本国に送還されたという。そのうちの1人でモスクワ出身の28歳は、写真家として働いているところを見つかって逮捕され、強制送還された。
就労目的で入国した人々も強制送還されているが、徴兵逃れの疑いをかけられれば、ロシア政府の怒りを買うことになるだろう。
バリ島を訪問したロシア人の中にストリートアーティストのセルゲイ・オブセイキンさんがいる。水田の真ん中に制作された反戦の壁画には、徴兵や戦争に対するオブセイキンさんの意見が盛り込まれている。
「故郷を離れざるを得なかった他の人々と同じように、自分も観光客としてバリに来た」とオブセイキンさん。
「ロシアは今、政治的に厳しい状況に置かれている。どこで戦争が起きようが、私は戦争に反対だ」(オブセイキンさん)
「ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人など、戦争に反対する人々が大勢バリにやってきた」とオブセイキンさんは続けた。「みんな互いに上手くやっている。この戦争を始めたのは普通の人間ではないと理解している」