ANALYSIS

兵器備蓄と非対称戦争 台湾は米国の協力で中国の侵攻を阻止できるか

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軍事演習で砲撃を行う中国の艦艇=8日/Thomas Peter/Reuters

軍事演習で砲撃を行う中国の艦艇=8日/Thomas Peter/Reuters

だが、李氏は、台湾が喫緊で必要なのは、全面戦争の際に中国の第1波の攻撃を乗り切る可能性の高い、より小型の携帯兵器を備蓄することだと述べた。中国は初期の段階で、台湾のインフラと軍事標的の両方を長距離ミサイルで攻撃してくる可能性が高い。

李氏は昨年出版されて話題を呼んだ著書「Overall Defense Concept」の中で、台湾は戦闘機や駆逐艦に多額の投資を行う方針を転換すべきだと主張している。台湾の軍事資産はすでに数で中国に大きく引き離され、長距離ミサイルで攻撃されれば簡単に機能不全に陥りかねない。

中国の昨年の防衛費は2300億ドルで、台湾の168億9000万ドルの13倍以上にものぼる。

したがって台湾は艦艇や戦闘機の数で張り合うのではなく、小型兵器の調達に重きを置いた「非対称戦争」を推し進めるべきだというのが李氏の意見だ。携帯式ミサイルや地雷をはじめとする小型兵器は検知されにくく、かつ敵の進軍を足止めするのに効果的だ。

「ウクライナ軍は対艦ミサイル『ネプチューン』でロシアの戦艦を沈没させた。非対称戦争の態勢が整えば、我々も戦闘能力を維持することができる。破壊を試みれば、敵はこちらに近づかなければならない。そうなれば、我々の攻撃を受けやすくなる」(李氏)

「十分な非対称戦能力があれば、たとえ米国の介入がなくても、中国は武力行使で台湾を占領することはできないだろう」と李氏は続けた。

米国は非公式ながら台湾と緊密な関係を維持し、かつ法律によって台湾に自衛のための兵器を販売する義務を負っている。しかし、中国侵攻の際に介入するか否かについては、あえて明言を避けている。いわゆる「戦略的曖昧(あいまい)さ」政策だ。

携帯兵器

米国議会で可決されバイデン大統領が署名した今年の国防権限法で、台湾は最大10億ドルの兵器および弾薬を米国から受け取り、高まる中国の軍事的脅威に対抗することが可能になった。

国防権限法では、地域的な有事備蓄の創設も可能になった。つまり中国との軍事紛争が勃発した場合に備え、米国防総省は台湾内に武器を備蓄することができる。

今回の記事でCNNの取材に応じた台湾国防部報道官は、「有事」の定義や台湾軍が即時運用できる軍需物資の種類、それら軍需物資の納期について、米国と協議していることを認めた。

こうした措置は台湾が自衛する上での必要性を満たすことのみを目的としており、軍需物資の「買いだめ」ではないとも付け加えた。

米インド太平洋軍は備蓄に関する協議が進んでいることについて、詳細なコメントを控えたが、今後も台湾が十分な自衛能力を維持できるように努めると述べた。

一方、中国外務省はCNNに、米台間のいかなる軍事的交渉にも「断固反対する」と語り、中国政府は「あらゆる必要な措置」を講じて、自国の主権と安全保障上の利益を守っていくと付け加えた。

淡江大学の准教授で軍事専門家の林穎佑氏は、有事備蓄を行うのであれば、運用の有効性を確保するために、台湾軍がすでに使用している武器弾薬の備蓄に注力すべきだと述べた。

「米国が提供しようと考えるかもしれない武器の中には、おそらく『スティンガー』や『パトリオット』といったミサイルが含まれるだろう」と林氏は述べた。スティンガーは兵士が単独で発射できる地対空ミサイルで、パトリオットは敵のミサイルや航空機を撃墜できるミサイル防衛システムだ。

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