李氏は他に備蓄可能な兵器として、ウクライナでも対ロシア軍戦車用に多用されている米国製の対戦車ミサイル「ジャベリン」を挙げた。
AIM120中距離ミサイルを地上から発射できる地対空ミサイル「NASAMS(ネイサムス)」も、中国の戦闘機を狙うのに有効だろうと李氏は語った。
その他検討すべき兵器に、徘徊(はいかい)型兵器、いわゆる「自爆型ドローン(無人機)」がある。兵士が単独で運搬可能で、重要度の高い目標物を攻撃できる他、装甲車や艦艇に対する兵器としても有効だという。
「こうした最初の攻撃を乗り切ることができる非対称兵器システムを十分用意することができれば、戦闘能力の大半が無傷のまま、敵の上陸作戦を阻止できる」(李氏)
どのぐらいあれば十分か
もうひとつ、中国に対する防衛で台湾にはどのぐらいの兵器やミサイルが必要かという問題もある。
想定される戦闘シナリオが多岐にわたるため、具体的な数字を挙げるのは難しいと専門家は言う。
李氏は著書の中で、中国軍は様々な選択肢を駆使して台湾制圧を試みてくるだろうと述べた。
全面戦争になれば、おそらく中国は長距離ミサイルを発射して台湾のインフラや軍事目標物を破壊した後、台湾海峡を越えて地上部隊を派遣してくるだろう。
軍事行動が制限されるようなケースでは、台湾周辺の空路と海路を閉鎖する、あるいは中国沿岸に近い台湾周辺の小さな島を占領するなど、別のシナリオも考えられる。
だが李氏は台湾に必要なミサイルの数について、「数万発」だろうと予測している。
李氏によれば、必要なミサイル数を算出するには、敵国が保有する攻撃用の軍事資産の総数と台湾の防衛兵器の効率性をもとに推定するのが比較的簡単な方法だ。「仮に敵がミサイルを1000発所有し、我々の撃墜成功率が25%だとすれば、約4000発の対弾道ミサイルが必要になる」
兵器以外に、米軍からの信号を受信できる携帯式レーダーシステムも台湾軍には役立つだろうと李氏は付け加えた。地上のレーダーが破壊された場合でも、米軍の助けを借りて想定される敵の目標物を識別することができるため有効だ。
「米国はウクライナに地上部隊を派遣しなくとも、電子戦機から信号を発信してウクライナ軍に発射位置を指示することができている。必要な装備をそろえ、戦争の際に米軍のシステムと接続できるようにしておくことが必要だ」(李氏)
李氏によれば、台湾が備蓄の可能性の重要性を米国と協議すべき理由は他にもあり、兵器弾薬や予備部品の備蓄だけにとどまらない。
李氏は「(有事備蓄は)台湾防衛に対する米国の決意を中国に示すという意味でも、非常に重要だ」との見方を示した。
◇
本稿はCNNのエリック・チェン記者による分析記事です。