ウクライナ南部前線に広がる「沈黙」、反攻開始への臆測募る
一方、ウクライナ軍にとってザポリージャ州での戦果は、ロシアのより広範な軍事作戦に一段と強力な打撃を与える可能性がある。占領されたドンバス地方と、同じく占領されたクリミア半島を結ぶ陸の回廊となっているからだ。ザポリージャ州はロシアが昨年掌握した地域で、14年にロシアが一方的な併合を宣言したクリミア半島とロシア本土を陸路でつなげる、ロシアにとって長期的にもっとも有用な地域となっている。
ザポリージャ州を失えば、クリミア半島のロシア軍を大きな危険にさらし、占領地が2つに分かれる結果になる。もしウクライナ軍のあまりに明白な野心の実現を回避できなければ、ロシアは自軍に戦略的能力がないことをさらすことにもなる。
今はウクライナにとっても決定的に重要な時期だ。北大西洋条約機構(NATO)はこれまでになく団結し、ウクライナへの支援と武器供与で大胆になっている。これほど目標設定が明確となる状況は西側民主主義国では外れ値に当たり、来年には選挙や経済条件など他の雑音でその明確さが薄まるだろう。今どのような発表があっても、ウクライナは来年、今のようなレベルの支援を当てにすることはできない。
ウクライナは今、ここ数カ月よりも弱い敵を目の前にしている。ロシア軍は負傷した受刑者の兵を前線に戻している状況だと複数の受刑者の新兵が明らかにしている。
ウクライナ軍はかつてないほど高度な武器と訓練をNATOから提供されている。西側の支援国からも、有利な戦況を開くのに必要な良質かつリアルタイムの情報を間違いなく入手している。
そして今目撃している沈黙――ザポリージャ州の前線からティックトックやその他のコメントがほぼ完全にない状況――は、この重要な段階が進んでいるということをこれまでになく明確に示す兆候の可能性がある。