羊放牧の男性、米軍の攻撃で死亡と遺族が訴え シリア
(CNN) 米軍がシリア北西部で行ったドローン(無人機)攻撃で、羊を放牧していた56歳の男性が殺害されたと親族が訴えている。男性は10人の子どもの父親だった。米中央軍司令部はこの作戦に関連して民間人1人が死亡した可能性があることを明らかにした。
米中央軍はシリア北西部で国際テロ組織アルカイダの幹部を狙って今月3日に攻撃を実行したことを、ツイッターへの投稿で同日明らかにした。
それ以上の情報は作戦に関する詳細が判明した時点で公表するとしていた。
当局者はこの作戦が成功したと宣伝し、目標を達成したことを確信すると強調していた。しかしシリア北西部には米軍の拠点がないことから、標的とした人物の身元確認は難しかった。同地は大地震のために壊滅的な被害が出ている。
今回のドローン攻撃に関してそれ以外の死傷者は報告されていない。
作戦から2週間たった今も、中央軍は標的とした人物に関する詳しい情報を明らかにしていない。
中央軍の声明では「この攻撃の結果、民間人1人が犠牲になった可能性があるとの疑義については認識している」と述べ、「意図せず民間人を傷つけた可能性」があるかどうかを調査していると説明した。
米軍が作戦を実行した日に同じ場所で死亡した男性について、親族は武装組織とは無関係だったと訴えている。
死亡したルトフィ・ハッサン・メストさんは5月3日午前、イドリブ県の村で羊を放牧していた。兄は爆発音を聞いて現場に駆け付けたと振り返る。
「山を越えて行ってみると、ルトフィと6頭の羊が死んでいた」。兄のモハマド・メストさんは19日、CNNにそう語った。
シリアのボランティア救助組織「シリア民間防衛隊」(通称ホワイトヘルメッツ)は通報を受けて現場に急行した。
同団体は19日、CNNに寄せた声明の中で、男性の遺体の横の地面にはミサイルでできたくぼみが一つだけあったと説明。男性が羊を放牧していたことも確認した。現場には男性の妻や近隣住民などが集まっていたという。
シリア民間防衛隊からCNNに提供された現場の映像には、女性が泣く声や、地面に倒れて動かなくなった遺体を若い男性が抱きしめる姿が収録されている。
3人の男性が若い男性を引き離し、別の男性が遺体を布で覆った。「彼は殉教者になった。神の意思だ」という声が聞こえていた。
シリア民間防衛隊は遺体を現地の医療施設に搬送した。
ルトフィさんは5歳児を含む10人の子どもの父親で、シリア内戦の間も村を離れたことは一度もなく、どの勢力も支持していなかったと兄は言い、「弟は生計を立てようとしていたただの民間人にすぎない」と訴える。
遠い親類の男性も、ルトフィさんはシリア政権も反政府勢力も支持していなかったと証言、「彼がアルカイダだったなんてあり得ない。ひげさえ生やしていなかった」とCNNに語った。
米中央軍はアフガニスタンから撤退する数日前に行ったドローン攻撃で、子ども7人を含む民間人10人を死亡させた過去がある。
軍は当初、過激派組織イラク・シリア・イスラム国(ISIS)系の工作員を殺害したと主張していたが、その後この主張が通用しなくなり、作戦は恐ろしい過ちだったと認めた。
ロイド・オースティン国防長官の判断で最終的に、この作戦の関係者は誰ひとり罪に問われなかった。