ウクライナの防空体制、かつてなく強固に ただし鉄壁とはいかず

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ゲパルトはドイツ語で「チーター」の意味。35ミリ砲を2門備えており、1門あたり毎分550発を発射できる/Vasco Cotovio/CNN

ゲパルトはドイツ語で「チーター」の意味。35ミリ砲を2門備えており、1門あたり毎分550発を発射できる/Vasco Cotovio/CNN

オレフ氏の部隊は既に「シャヘド」ドローン4機、ミサイル2基を破壊した。

「ロシア人は自分たちのミサイルの撃墜は不可能だと言いたがるが、迎撃を可能にする技術やチームの士気、練度、任務の理解がそろっていれば、不可能なことなどない」「敵の目標は破壊できる」

欧米諸国からの供与のおかげで、今やウクライナは短・中・長距離の目標を攻撃可能な多層的な防空網を擁する。

その中で先鋒の役割を果たすのがゲパルトだ。仏伊の「SAMP/T」やドイツの「IRIS―T」、米国の「NASAMS」や「パトリオット」などはロシア軍に狙われるのを避けるため、一層厳重に秘密が守られ、人目に付かない非公開の場所に配置されている。

防空システムを強化した成果は、ロシアのミサイルやドローンによる被害が減っている点にはっきり表れている。

この部隊はロシアのミサイルを2基、イラン製の「シャヘド」ドローンを4機破壊した/Vasco Cotovio/CNN
この部隊はロシアのミサイルを2基、イラン製の「シャヘド」ドローンを4機破壊した/Vasco Cotovio/CNN

「こうした非常に効果的な兵器で防空システムを強化することで、我々は防空システム全般の有効性を向上させている。特に大きいのは、キンジャルや弾道ミサイル、巡航ミサイル、攻撃ドローンに対抗する手段を手にした点だ」。ウクライナ統合軍の司令官を務めるセルヒイ・ナエフ中将はそう語る。

ナエフ中将はゲパルトを統括する人物。ウクライナの防空がこれほど有効になったのは、ゲパルトと他のシステムを組み合わせて運用しているためだと指摘する。

「ウクライナ軍は全般的な防空構想の中で、適切な間隔を空けてゲパルトを配置している。撃墜される敵の目標を数えると、目に見える成果が出ている」

「迎撃率は絶えず向上しており、現在の有効性は8割を超える」

このような成功は他に類を見ないと、ナエフ氏は語る。

「この有効性は我々のチームや、ここにいる要員、協力国から提供された支援のたまものだ。協力国には感謝している」「我々は必ず学び続ける。そして必ず、航空攻撃から我が国の国土を守る」(ナエフ氏)

ドニプロ攻撃

それでも、一部のドローンやミサイルはウクライナの対空防御網を突破する。

被害が最小限にとどまることもあるが、ウクライナ中部の都市ドニプロに対する先月26日の攻撃のように、甚大な被害が出る場合もある。

「占領者は前線地帯への攻撃に対空誘導ミサイル『S300』や『S400』を使用する場合が多い。(ドニプロの)民間目標への攻撃に使われたのは、このタイプのロケットだったと思われる」。ウクライナ空軍の報道官は攻撃後にそう説明した。

「人口密集地に対しこのタイプの兵器を使用するのは紛れもないテロに当たる」

ナエフ中将は、こうした攻撃でウクライナの防御が突破されるのを防ぐには、さらなる装備品や弾薬、要員への追加訓練が必要になると指摘する。

「民間人や重要インフラの保護は、我々が受け取る装備品や、要員の訓練に左右される」とナエフ氏は語る。

「防空システムの量と質を向上させるためには、最新モデルの装備や、そこで使用する弾薬およびミサイルが間違いなくもっと必要になる。敵はほぼ毎晩のように我々の防空システムを試しているからだ」

ナエフ氏はそう語り、「我々は自分たちのミサイルや弾薬を消費している状況だ」と言い添えた。

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