不動産価格が高騰、遺灰の保管も高額に 香港
善心を設計した建築家ウルリッヒ・キルヒホフ氏によると、このビルには墓参りに訪れた遺族たちが利用可能な屋上や、ポケットガーデンが並ぶバルコニーがあり、建物の約5分の1はオープンスペースになっているという。
また除湿器やエアコンも備えており、遺族はアプリを使って先祖への供物を持参する時間枠の予約が可能だ。
善心は、宝石と不動産事業で財を成した70代の実業家マーガレット・ジー氏が考案した。
ジー氏は2007年に亡くなった夫の追悼式を行う場所や、遺灰を埋葬する墓地を見つけるのに苦労したことから、死者をしのぶ場所が不足していると感じ、何とかしなければと考えたという。
生きる場所も死ぬ場所も足りない
香港では、不動産の需要が供給を大きく上回り、不動産価格の異常な高騰を招いているが、コロンバリウムにも同じことが起きている。
700万人を越える人口と世界で最も人口密度の高い地域の一部を抱える香港では、スペースをめぐる競争が激化しており、それは居住用のスペースでも、死者を供養するためのスペースでも同じだ。
香港の面積は1110平方キロで、米ニューヨーク市の約1.4倍もあり、決して小さな場所ではないが、山が多く、土地の多くは開発に適していない。
そのため地価が非常に高く、不動産開発業者は昔から可能な限り多くの区画を詰め込める善心のような高層ビルを好んで建設してきた。
その結果、2021年の国勢調査によると、香港の住宅の広さの平均はわずか430平方フィート(約40平方メートル)と、世界でも最小の部類に入るが、住宅の平均価格は100万ドルを超える。