リサイクル
より大型の兵器に関しては、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)がハマスの技術者を対象とした研修を約20年間行っていると、MEIのリスター氏は説明する。
何年にもわたってより先進的なシステムに接することで、ハマスの技術者は必要な知識を身に着ける。それにより地元での生産能力が著しく向上するという。
「ハマスでミサイルやロケットの製造に携わる技術者は、イランの地域ネットワークの一部に組み込まれている。つまりイランで頻繁に研修や情報交換を行うのは、それ自体が同国による取り組みの一環であり、地域全体で自国の代理勢力の専門性を確立することを意図している」(リスター氏)
一方で、ハマスが自前の武器の原材料を調達する方法にも、彼らの工夫と機略が見て取れる。
ガザに重工業は存在しない。世界の大半の地域では、重工業が兵器の生産を支えている。CIAのファクトブックによれば、ガザの主要産業は繊維、食品加工、家具製造だ。
しかし主要な輸出品にはくず鉄が含まれる。くず鉄は地下トンネルでの兵器製造の原材料になり得る。
そうした金属は多くの場合、ガザでの破壊的な戦闘によりもたらされる。ワシントン近東政策研究所の2021年のフォーラムで、米国籍を取得したガザ出身の人権活動家、アフメド・フアド・アルハティブ氏はそう記述した。
ガザのインフラがイスラエルの空爆で破壊されると、後に残った金属薄板や金属管、鉄筋、電気配線は、ハマスの兵器工場に送られ、ロケット弾の胴体あるいはその他の爆発物として生まれ変わる。
イスラエル軍の不発弾も再利用され、ハマスの兵器の供給網に加えられると、アルハティブ氏は指摘する。
「イスラエル国防軍(IDF)の作戦は、間接的にハマスに原材料を供給している。それらは他の場合であればガザにおいて厳しく監視され、全面禁止の対象となる物資だ」(アルハティブ氏)
もちろん、全てが一夜にして起きたことではない。
7日にあれだけの弾薬を、かくも短い時間に発射したという事実は、ハマスがかねて自前の武器庫を増強してきたことを意味するはずだ。長年にわたって、密輸と製造の両方により武器は拡充されてきたと、米空軍の中東問題担当アナリスト、アーロン・ピルキントン氏は指摘する。
前出のハマス幹部、バラカ氏は、7日の攻撃の準備に2年を費やしたと明らかにした。
攻撃の計画では外部の関与に一切言及せず、ハマスの同調者が武器と資金を支援しているとだけ説明。何よりもまず、イランからそれらの提供を受けていると述べた。
アナリストらもまた、イスラエル及び他国の諜報(ちょうほう)機関と同様、ハマスによる攻撃の規模と範囲に不意を突かれたと口をそろえる。
米空軍のピルキントン氏は、大量のロケット弾が発射されたこと自体は実のところそれほど込み入った話ではないと指摘。驚くべきなのは数千発のロケット弾の備蓄、移動、配備、発射がイスラエル、エジプト、サウジアラビアなど他国の諜報の目を完全に逃れて実行された点だという。
イランの手引きなしにハマスがこれだけのことを成し遂げられるとは考えにくいというのが、同氏の見解だ。
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本稿はCNNのブラッド・レンドン記者の分析記事です。