タイ新政権、大麻非犯罪化の見直しを検討する理由は
後退?
アジアの大半の国々には厳格な麻薬取締法が存在し、シンガポールやインドネシアなどでは、麻薬の密売、所持、使用で有罪となった者には死刑判決も下される。
実はタイでも、最近まで麻薬犯罪に対して厳罰が科されていた、と語るのは、国際薬物政策コンソーシアム(IDPC)のアジア地域担当ディレクター、グロリア・ライ氏だ。ライ氏は、大麻の使用を医療目的に制限することは逆効果と考えている。
ライ氏は「薬物を禁止してもその薬物がなくならないのは明らかであり、当初の意図とは真逆の効果をもたらす恐れすらある」とし、さらに「タイの新政権が明らかに失敗に終わった麻薬政策に逆戻りすれば壊滅的結果をもたらす」と警告した。
セーター氏率いる連立政権がどのように法律を変更するつもりなのかはまだ明らかにされていない。
セーター氏が所属するタイ貢献党は、総選挙前の選挙運動の一環として、22年の大麻の非犯罪化を撤回すると公約していた。しかし同党は今、大麻の非犯罪化を積極的に推進したアヌティン・チャーンウィラクン保健相率いるタイ誇り党と連立を組んでいる。
タイ誇り党は、大麻を麻薬に再指定することには反対しているが、大麻産業の監視強化を公約している。
しかし、大麻ビジネスを地下に押し戻せば、取り締まりが困難になり、その結果、大麻取締法違反で捕まる人が増えたり、大麻取引の主体が、納税をしているまっとうな事業者から、タイや近隣諸国にメタンフェタミンなどの違法薬物を大量に持ち込んでいる組織犯罪カルテルに戻ってしまうと専門家らは指摘する。
IDPCのライ氏は、「懲役刑などの刑事罰が再び導入されれば(中略)逮捕され、強制的に薬物検査を受けさせられ、再び前科がついてしまう人が出てくる」とし、「タイ政府はむしろ、証拠に基づいて意思決定がなされるようにデータを収集し、(国民に)提示すべきだ」と付け加えた。