ウクライナ国鉄の「抗戦」、運行維持に奮闘2年 乗客も戻る

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ウクライナ東部クラマトルスクの駅で発車を待つキーウ行きの列車/Marek M. Berezowski/Anadolu/Getty Images

ウクライナ東部クラマトルスクの駅で発車を待つキーウ行きの列車/Marek M. Berezowski/Anadolu/Getty Images

(CNN) ロシアによる軍事侵略が3年目に入り、ミサイルやドローン(無人機)攻撃などを連日のように受けるウクライナで、国鉄が通常の運行維持を目指す独自の抗戦を続けている。

「UZ」との略称でも親しまれる国鉄は、実用性などを打ち出す経営方法で東欧諸国では常に敬意や称賛を集めていた。ロシアの侵略で民間の航空路線がほぼ使えない時期には、国民の長距離移動に鉄道は最大の移動手段ともなった。

ロシアによる侵攻の初期、市町村への攻撃が強まり、数千人規模が殺害される中で鉄道の利用客は低減した。ただ、利用客数は今や、侵略前の水準に戻り、昨年は約2490万人を運んだという。今年は2750万人に増える見通しともなっている。

国鉄の戦略・変革部門の事業責任者によると、職員は命を失う危険に遭遇しながらも職務を続けている。長時間の勤務、厳しい労働環境や攻撃を受ける脅威に絶え間なくさらされる仕事に励むことは職員の体や精神衛生に悪しき影響を及ぼしていると説明した。

負傷した職員や職務中に亡くなった職員の親族には、金銭面や心理面などで支援を提供する。「鉄のような結束を持つ家族」と呼ぶ事業の一環として、「そうすることで彼らは我々にとって重要な存在である」との思いを伝えたいからだとした。

同社によると、ウクライナ軍に入り銃などを手にした職員は現在、1万人以上。うち死亡したのは侵略が始まった2022年2月以降で573人、負傷者は約1500人に上った。

戦場で物理的あるいは心理的な打撃を受けた職員には、医療面や心理面で手助けしている。首都キーウではリハビリテーション施設を建設中だという。

一方で、将来的な事業展開を視野に入れた計画も積極的に練っている。この中には戦闘で体に障害を負った退役兵が鉄道を利用する際の気配りや施設改修などが含まれる。

主要駅でのエレベーターや利用しやすいようにしたトイレの設置、特別訓練を受けた付き添い役の職員の配置、聴力に難がある乗客への支援などが内容となっている。ゼレンスキー大統領の妻オレナ・ゼレンシカさんがこれらの事業を後押ししているという。

これら退役兵の乗車に留意して改造などした列車55両も既に準備。新たに製造もしくは最新型に改修した車両にもこれらの機能を持たせるとした。職員1万人以上が最近、身体障害を被った人々に応対する追加の訓練も受けたという。

国鉄の旅客部門の責任者はCNN Travelの取材に、「我々は戦っているだけではない。(事業上の)前向きな目標も据えている」との意欲を示した。

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