中間層ほぼ消滅、国民の半数が貧困生活 ミャンマー情勢で国連
(CNN) 軍と少数派武装勢力との戦闘で内乱の様相が深まるミャンマー情勢で国連開発計画(UNDP)は18日までに、国民の約半数が貧困ライン以下の日常生活を送る苦境に陥っているとの新たな報告書を公表した。
同国の総人口は約5400万人。このうちの49.7%が1日あたり76米セント(約117円)以下の収入で暮らしているとした。この比率は2017年以降、倍の水準に達した。
軍部がクーデターで実権を掌握してから約3年が経過したが、国内経済は急速に悪化。中間層の存在が消滅する瀬戸際まで追い詰められたとした。インフレ高騰で各世帯は食費、医療費や教育費の切り詰めを強いられた。
今回の報告書をまとめたUNDPの研究員らは、昨年10月の時点でミャンマー国民の新たな25%が貧困ライン以下の生活に突き落とされる間際にあるとも報告した。
この報告書の公開時以降、状況はさらにひどくなっている可能性にも言及。戦闘は一段と激しくなっており、日常生活を失った国民が増え、事業継続を断念した企業も拡大している可能性があるとした。
ミャンマーは11年の軍政から民政への移管後、経済、政治両面での改革もあり貧困率の削減などを達成。アジア開発銀行によると、16年には東南アジアで最高の経済成長率も誇った。世界銀行によると、11~19年の成長率は平均で年間6%に伸びていた。
民主化運動指導者のアウンサンスーチー氏率いる政権が軍部クーデターで崩壊した21年以降、事情は一変した。新型コロナウイルス禍の到来がさらに逆風ともなった。
UNDPのアジア担当責任者は、総体的に言えば、ミャンマー国民の約4分の3が貧困生活を強いられ、毎日を何とかしのいでいる国民も貧困ライン層へ突き落とされる忌むべき状態がまさにあることだと指摘。「貧困層を生み出す構造の深みは甚大」ともし、「中間層は文字通り消えつつある」とも評した。
今回の報告書は、23年6月~10月にかけてミャンマー国民1万2000人以上を対象に実施した。同国全土に範囲を広げた調査としては近年で最大規模ともなっている。
外国投資の注入は急減し、失業して海外に職を求める国民の数は目立って増えている。報告書は、同国は21年に政情混乱と新型コロナ禍に同時に襲われ国内総生産(GDP)の18%激減を被ったが、この打撃からの回復は進んでいないと分析。
同責任者は、大規模な都市圏での生活環境などがこれほど早く荒廃する事態に遭遇したことはないとし、「最大都市ヤンゴンや主要都市マンダレーの状況は本当にひどい」とも評した。
同国ではクーデター以降、軍政打倒などを掲げる少数民族武装勢力との衝突が目立ってきた。南東部カヤー州などでの激戦の続行が伝えられている。