「突然動けなくなった」 ガザで25年ぶりポリオ感染の乳児、ワクチン間に合わず
しかし、ガザでは4万人以上を殺害したイスラエルの軍事作戦が今も続き、全土のインフラが破壊された状態にある。退避命令が繰り返されるたびに数千人が避難を余儀なくされる状況の中、予防接種計画の実施には数々の困難がつきまとう。
「ガザ各地に22カ所あった保健所のうち、現在も機能しているのは5カ所のみ。ガザ全域の爆撃で、我々が運営できる空間はどんどん縮小している」 。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)幹部はCNNの取材にそう語った。
状況が許せばワクチン接種は8月31日から開始される。
ガザ地区への物資搬入を管理するイスラエルの占領地政府活動調整官組織(COGAT)は、ポリオのワクチン約2万5000バイアルと、ワクチンを一定温度に保つための冷蔵設備のガザ地区への搬入を許可したと述べている。
しかしアブドゥル君と母のアブ・ジディアンさんにとっては手遅れだった。
「絶望を感じる。状況があまりに悪いので、私も医師たちも苦しい」と語るアブ・ジディアンさん。今はただ、アブドゥル君が歩けるようになることを願っている。ポリオの治療薬はなくても、症状を和らげるための療法はある。ただ、医療が崩壊したガザの現状で、アブ・ジディアンさん一家がそれを手にすることは難しい。
「治療法または解決策を見つけるため、この子を国外へ連れて行ってほしい。息子が歩けるようになり、もう一度動けるようになるために」。それが母の願いだった。