台湾総統、中国が台湾の祖国になることは「あり得ない」 歴史的背景もとに主張
(CNN) 台湾の頼清徳(ライチントー)総統は5日、10日の台湾建国記念日を前に開かれたコンサートの場で、台湾政府のほうが中国政府よりも歴史が長いため、中国が台湾の祖国になることは「絶対にあり得ない」と述べた。時機を慎重に見計らったこの発言は両国間の激しい歴史的対立を浮き彫りにしている。
5月に総統に就任した頼氏は、台湾の主権を擁護し、台湾に対する中国共産党の主張を拒否したことで、長い間中国の怒りに直面してきた。
中国共産党は台湾を一度も支配したことがないにもかかわらず、必要なら武力をもってしても台湾を「再統一」すると誓っている。一方で台湾の多くの人々は、自分たちを明らかに台湾人だと考えており、中国の一部になることは望んでいない。
頼氏は台湾について、すでに中華民国(ROC)と呼ばれる「主権を持つ独立した国」であり、その政府は中国本土を数十年にわたって統治していたが、中国共産党が政権を握ると台湾に移ったと強調。歴史を掘り下げ、自身の意見を主張するこの発言は中国を激怒させる可能性がある。
中華民国は、辛亥革命により中国最後の王朝である清朝が倒された後の1912年に成立した。台湾は当時、日本の植民地だった。
日本が第2次世界大戦で敗戦した45年に中華民国が台湾の実効支配を開始した。4年後には国民党政府が毛沢東率いる共産党軍との内戦に敗れて台湾に逃れた。
北京では中国共産党が権力を握り、49年10月1日に中華人民共和国(PRC)を建国。それ以来、中国と台湾は別々の政府によって統治されてきた。
過去数十年で最も強硬な中国の指導者である習氏は、台湾に対する言説と攻撃を強めており、軍事衝突の懸念を高めている。
頼氏は中国が10月1日に建国75周年を迎えたばかりである一方で、台湾は数日後に113周年を迎えると述べ、観衆から喝采を浴びた。
「したがって、経年の点から言えば、中華人民共和国が中華民国の人民の祖国になることは絶対にあり得ない。それどころか、中華民国は実際には75歳以上の中華人民共和国の国民の祖国である可能性がある」(頼氏)
7日は中国の国慶節の最終日であり、中国政府は頼氏の発言に反応していない。
しかし、頼氏の発言は台湾の最大野党である国民党(KMT)から批判を浴びている。国民党は以前から頼氏が率いる与党・民進党が中国との緊張を不必要にあおっていると非難している。
台湾と中国の指導者は長年、建国記念日の演説を利用して互いにメッセージを送ってきた。
習氏は中国の建国75周年の前日にあたる先月30日、台湾との「再統一」を実現するという誓約を改めて表明した。