世界は3度目の核時代の瀬戸際に 英軍トップが警告
ロンドン(CNN) 世界は3度目となる核の時代の瀬戸際にある。英国の軍隊のトップがそう警鐘を鳴らした。
英海軍のトニー・ラダキン参謀総長は4日、英シンクタンク「王立防衛安全保障研究所(RUSI)」での講演で、「世界は変わってしまった」「世界的大国の地位は移行しており、3度目の核の時代が迫っている」と述べた。
ラダキン氏の警告によれば、今回訪れる時代はこれまでよりも「あらゆる面においてより複雑」だという。同氏は最初の核の時代を冷戦期、2度目を軍縮の取り組みと定義している。
世界が「迎えつつある」という第3の核の時代は、「数多くの並行するジレンマ、核の拡散、破壊的なテクノロジーによって定義される。過去には存在した安全保障の仕組みがほぼ完全に欠如している状況もそこに加わる」と、ラダキン氏は指摘した。
その上で、ロシアによるウクライナでの戦争と中東での数多くの紛争が世界の安定を覆したと示唆した。
具体的にはロシアのウクライナ国境における北朝鮮兵の配備が、この1年間で「最も常軌を逸した展開」だったという。ロシア政府によるイラン製ドローン(無人機)の使用と、イエメンの反政府武装組織フーシへの軍事援助を通じて西側のウクライナ支援に報復するとした脅迫行為もそれに匹敵する動きだったと分析する。
11月にロシアは核ドクトリンを改定。その2日前にはバイデン米大統領がウクライナに対し、米国製の兵器でロシア領内奥地を攻撃する許可を与えていた。
ただラダキン氏は、ロシアが北大西洋条約機構(NATO)を攻撃もしくは侵攻する可能性は「万に一つ」に過ぎないとみている。「その場合の反撃が通常兵器であれ核兵器であれ圧倒的なものになる」ことは、ロシアも理解しているからだ。
「NATOによる抑止の戦略は機能するし、現時点で実際に機能している」「しかしその戦略は常に強化し続けなくてはならない。そうすることで危険度を増すロシアに対抗する必要がある」(ラダキン氏)
世界情勢に不安が渦巻いている状況を受け、各国は三つのグループに別れたとラダキン氏は指摘。一つは「グローバルな支配に挑戦しようとする」権威主義的国家でロシア、中国、北朝鮮、イランが該当する。
二つ目のグループは「責任ある国家群」で、主に民主主義国からなるが湾岸の君主制国家もここに含まれる。これらの国々は「互いに連携し、世界の安定と安全保障を維持することに注力する」。
三つ目のグループを構成するのは、「前出の二つのグループの間を行き来しながら最大限の利益を得ようとする」国々だという。
NATO諸国としては敵対国を打倒するため、自分たちの優位を維持する必要があるとラダキン氏は付け加えた。