ブラジル象徴するキリスト像、管理めぐり教会と国の間で論争に
一方、国立公園局は、この提案は危険な前例になりかねないとして危機感を募らせる。
ブラジル国立公園・保全局のマウロ・ピレス局長は、「これはキリスト像だけの問題ではない。ブラジル国内の全保護区の完全性にかかわる」「私的管理のために国立公園の一部を切り離せば、環境保護活動の長年の進展が台無しになりかねない」と語る。
公園はオマキザルやハナグマなどの種が生息する繊細な生態系で成り立っている。かつてはバクやジャガーも生息していたが、今では姿を消した。騒音や汚染、建設作業が増えればそうした生態系が破壊されかねない。
これに対して教会側は、「教会と周辺は責任を持って維持管理してきた。私たちの目的は訪れる人の快適性を高めることであり、環境を害することではない」と強調する。
論議は土地利用や保全だけにとどまらない。ブラジルの世俗憲法では、政府が宗教団体を優遇することを禁じている。しかしキリスト像をめぐる論議はそのグレーゾーンにあり、ブラジルがカトリック教のルーツと世俗性や環境保護の取り組みとの間でどう均衡を取るかという問題を浮上させた。
法案は既に上院を通過して観光小委員会で審議されており、同委員会で承認されれば下院に提出される。