イスラエル、ヨルダン川西岸で大規模軍事作戦 子ども含む10人死亡
(CNN) イスラエル軍は21日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸で子ども1人を含めて少なくとも10人のパレスチナ人を殺害した。ガザ地区の停戦発効からわずか2日後。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はヨルダン川西岸のジェニンに対する「大規模軍事作戦」を発表している。
ネタニヤフ首相は、「ジェニンのテロ撲滅」を目的とする大規模軍事作戦「アイアンウォール(鉄の壁)」を開始したと発表した。
これに対してパレスチナのイスラム組織ハマスは、「ヨルダン川西岸の住民や若者に対し、占領軍とのあらゆる接点で衝突をエスカレートさせる」よう呼びかけた。
パレスチナのワファ通信によると、イスラエル軍の戦闘機がジェニンを攻撃し、狙撃兵や装甲車などがジェニン難民キャンプを包囲して、救急車の進入を妨害している。
現地のジャーナリストが撮影した映像には、ブルドーザーなどの装甲車多数がジェニンに入る様子が映っている。パレスチナ保健省は、ジェニンで少なくとも10人(男性9人と10代の少年1人)が死亡し、40人が負傷したと発表した。
10人が死亡した経緯は不明だが、少なくとも2人は丸腰の民間人だったと思われる。地元住民はCNNに対し、銃撃されてジェニン市内の病院で死亡した男性は民間人だったと語った。
パレスチナの武装組織イスラム聖戦の軍事部門「クッズ旅団」は、難民キャンプ周辺で進攻してくるイスラエルの部隊に対して戦闘員が発砲していると発表。イスラム聖戦はイスラエルの軍事作戦について、ネタニヤフ首相が「ぐらつく連立政権」を救い、ヨルダン川西岸の刑務所に収容されていたパレスチナ人解放の「喜び」を台無しにする目的で行っていると述べた。
その上で、「占領された西岸の全住民に呼びかける。あらゆる手段でこの犯罪作戦に立ち向かい、その目的を阻み、西岸とガザのわれわれ住民の意思を抑圧している敵の敗北を確実にせよ」と呼びかけた。
イスラエル軍は昨年8月から9月にかけてもヨルダン川西岸北部で、大勢の死者を出す大規模軍事作戦を実施していた。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は20日、ヨルダン川西岸で相次ぐイスラエル人入植者や治安部隊による暴力に対し、憂慮を表明した。
OHCHRによれば、19日にはイスラエルの治安部隊が丸腰の14歳のパレスチナ人少年を射殺したと伝えられている。
さらに同日、入植者の集団がパレスチナ人の複数の集落を襲撃し、住宅や車両の放火、道路の封鎖、投石などを行った。
住民によると襲撃は20日も続いた。大勢の武装した入植者の集団が車や商店に放火して投石し、住宅に発砲。近くの集落に移動するとトラクター2台に放火して農作物の栽培地を破壊し、住宅を損壊させたという。
ここ数年で増え続け、ほとんど罪に問われることのない入植者による暴力については、国際社会が以前から非難している。
ヨルダン川西岸へのユダヤ人入植は国際法違反と見なされており、国連の国際司法裁判所(ICJ)は昨年7月、ヨルダン川西岸と東エルサレムへのユダヤ人入植を違法とする判断を示した。