ANALYSIS

米ウ首脳会談決裂にほくそ笑むロシア、米国との関係修復を推進

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ホワイトハウスの大統領執務室で公然と応酬を展開するトランプ米大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領=2月28日/Saul Loeb/AFP/Getty Images

ホワイトハウスの大統領執務室で公然と応酬を展開するトランプ米大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領=2月28日/Saul Loeb/AFP/Getty Images

(CNN) 熟練の外交ウォッチャーの目には、トランプ米大統領が大統領執務室でウクライナのゼレンスキー大統領を激しく批判した行為は、計画ずくの政治的不意打ちと映った。ゼレンスキー氏の信用を失墜させ、次なる一手の障害となる同氏を排除するためにトランプ政権が仕掛けた罠(わな)というわけだ。

計画的かどうかは別として、ロシア政府はホワイトハウスでの罵倒合戦にほくそ笑んでおり、米ロ関係修復に向けた協議が今後数週間にわたって継続、さらには加速すると見込んでいる。

公にはまだ何も発表されていない。だが内々には、かねて取り沙汰されていたトランプ氏とロシアのプーチン大統領による首脳会談が、ここにきて急ピッチで進められているとの観測が浮上している。

ロシア政府内では、ゼレンスキー氏とトランプ氏らの対立で戦争終結に向けた困難な交渉は二の次となり、すでに水面下で俎上(そじょう)に載っている米ロ間のうまみのある経済取引が優先されるとの楽観論も再燃している。

サウジアラビアの首都リヤドでは先月、ルビオ米国務長官とロシアのラブロフ外相が1回目の異例の協議を開催。ウクライナは蚊帳の外だった。

CNNは第2回協議に向けた準備が進められており、近く再び湾岸諸国で開催される可能性があるとの情報を入手した。

一連の協議でロシア側の経済特使を務めるキーマン、キリル・ドミトリエフ氏はすでにCNNの取材に対し、米国との協力には何らかの「エネルギー関係の取引が含まれる」可能性があると明かしたものの、詳細は発表されていない。

これとは別に、英紙フィナンシャル・タイムズは、ロシアの欧州向け天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の再開に米国の投資家を参画させる動きがあると報じた。ドイツはロシアによるウクライナ侵攻当初、ノルドストリーム2の承認を停止した。

ドミトリエフ氏はトランプ政権とロシアに対し、「人類のより良い未来の構築」に着手し、「投資と経済成長、人工知能(AI)の技術革新」、「火星探査」のような長期共同科学プロジェクトに注力するよう要請。米実業家イーロン・マスク氏が所有するX(旧ツイッター)に、スペースXのロケットとみられる乗り物で火星に向かう米国・ロシア・サウジの共同ミッションを描いた高度なコンピュータグラフィックを投稿した。

多くのリスクはさておき、ロシアとのビジネスから得られる利益が大きいのは明白だ。ちなみにロシアはレアアース(希土類)鉱物の埋蔵量で世界4位の規模を誇っており、ウクライナの埋蔵量をはるかに上回る。

この点が商売人のトランプ氏にとって魅力的なのは明らかで、うまみのある取引を執拗(しつよう)に追求する姿勢がロシア政府に利用されている状況だ。

ドミトリエフ氏はXで、「トランプ氏のビジネスの才覚はバイデン氏の言説を打ち砕く。打倒ロシアの取り組みは崩壊した」とコメントした。

しかし、トランプ大統領の1月の就任以降に目撃されている事態は金銭上の問題をはるかに超え、米ロ関係の根本的な再構築に関わっているように思われる。

トランプ政権はロシア政府に急接近することで、西側同盟国に背を向け、米政権のグローバル政策の激変の中で欧州を孤立させるリスクを冒しているのだ。

事態の急展開にやや面食らっている様子のロシア政府でさえ、この点に公に言及している。

ロシアのペスコフ大統領補佐官は国営テレビで2日放送された発言の中で、「(米国の)新政権は外交政策のすべての構成を急速に変化させている。これは私たちのビジョンとほぼ一致している」との認識を示した。

だが、なぜトランプ氏が米国の伝統的なパートナーよりもロシア政府を選ぶのか、その理由については依然として臆測が飛び交っている。

トランプ氏はロシア政府のエージェントであるとか、プーチン氏に借りがあるなどと示唆されることも多いが、その多くは根拠がない。

おそらく、ロシアは将来の中国との対決でおのずと米国側につく、最も重要な支援国である中国から切り離すことができるという米国右派のイデオロギー的幻想が、米政権の急速な地政学的転換を促しているのだろう。

だが、困惑する多くのウォッチャーにとっては、いずれもトランプ氏の異例のロシア接近の説明としてはしっくりこない。

公然と敵対しているわけではないにせよ、険悪なことが多かった米ロ関係はいま、新たな重大局面を迎えているようだ。

本稿はCNNのマシュー・チャンス記者による分析記事です。

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