ウクライナ軍事支援停止、「パトリオット」の弾薬枯渇か 民間人が弾道ミサイルにさらされる可能性
防衛効果は高いが費用も膨大
パトリオットは運用開始から40年近くが経つが、今なお世界最高レベルの防空システムとの見方が多い。巡航ミサイルや極超音速ミサイル、短距離弾道ミサイル、航空機の迎撃が可能だ。
その高い有効性ゆえに、パトリオットはロシアの重要攻撃目標となっており、ロシア軍は何度もパトリオットのシステムを狙ってきた。
ゼレンスキー氏は以前、ウクライナ領空の効果的な防衛には約25基のパトリオット・システムが必要だと述べたことがある。
ウクライナの保有数は現在およそ6基だが、正確な数や場所は厳重に秘匿されている。
米国は当初、パトリオットの供与に慎重だったが、ロシアが数カ月にわたって連日ウクライナの民間目標を空爆し続けたことから、ようやく提供に応じた。
初回供与分のパトリオットがウクライナに到着したのは、2022年2月の全面侵攻開始から約14カ月後。以来、ウクライナの防空体制の不可欠な部分を担っている。

ドイツのピストリウス国防相と並びパトリオットの使用訓練を受ける兵士らとあいさつを交わすウクライナのゼレンスキー大統領(手前左)=ドイツの訓練場/Jens Büttner/AFP/Getty Images
専門家によれば、ウクライナ軍はパトリオットを極めて効果的に運用しており、ロシアが「迎撃不可能」と主張していたキンジャル弾道ミサイルなどを撃ち落としてきた。
しかし、その費用は高くつく。
パトリオットの推定費用は1システムあたり約11億ドル(約1640億円)に上り、支援国からウクライナに送られた装備品の中で群を抜いて高い。
米戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、パトリオットのミサイル1発あたりの価格は約400万ドル(約5億9600万円)と、非常に高額だ。
「NASAMS(ネイサムス)」や「IRIS―T(アイリスティー)」など、巡航ミサイルやドローン(無人機)に対する有効性が確認されている代替システムもいくつか存在するが、高度な極超音速ミサイルや弾道ミサイルに対する防衛能力では、パトリオットに及ばない。
パトリオットの代替となり得る兵器としては、欧州のメーカー、ユーロサム社が製造する防空システム「SAMP/T」がある。ただ、パトリオット並みの効果を発揮するには多数のSAMP/Tが必要で、現状では供給面で大きな問題が残る。