シリアで宗派間対立が激化、一家惨殺も 国連報告
(CNN) 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は11日、シリアで宗派間対立が激化し、女性や子どもを含む一家全員が武装集団に殺害された例もあると報告した。
監視団体によると、アサド前大統領の地盤だった西岸地域で先週、同氏を支持する武装集団と新たな暫定政権の部隊が衝突し、800人以上が死亡した。
OHCHRの報道担当者は、少なくとも111件の殺人が記録されたと述べ、実際はそれよりはるかに多数の死者が出たとの見方を示した。
同担当者がスイス・ジュネーブでの定例会見で語ったところによると、多くの男性が家族の目の前で射殺されたとの証言もある。アサド一族と同じイスラム教シーア派の少数派、アラウィ派の街や村が標的となった。
同担当者は西部タルトス、ラタキア、ハマの各県で、暫定政権の治安部隊に加勢する武装集団が殺戮(さつりく)を実行したようだと語った。

銃弾によって穴の開いた病院の窓ガラスを指さす男性=10日、シリア・ラタキア/Moawia Atrash/dpa/picture alliance/Getty Images
在英の人権監視団体「シリア人権ネットワーク(SNHR)」は11日、死亡した803人のうち、383人はアサド氏側の武装集団に殺害されたと述べた。このうち172人が治安部隊のメンバーで、211人が民間人だったという。
一方、目撃証言やCNNが確認したビデオによると、暫定政権側による野外での「処刑」や、国を「浄化」するという武装メンバーの発言もあった。
暫定政権は10日、西岸地域での治安作戦終了を発表したが、その後も断続的に衝突が報告されている。シャラア大統領はアサド旧政権の残党が宗派間の争いをあおっていると主張し、民間人殺害に関与した者の責任を追及すると表明した。暫定政権は独立調査委員会を設立し、30日以内に報告書を出すことになっている。