ミャンマー発の国際詐欺、拠点摘発でも「未曽有」の横行
残された者たちへの懸念
詐欺拠点から最近救出された約7000人も、帰国のめどがほとんど立っていないケースが多い。
現地の武装勢力は被害者らに食料や避難先を提供する余裕がないとして、タイに対し、帰還に向けた越境の許可を出すよう求めている。
詐欺拠点に監禁された人々の中で、最も大きい割合を占めるのは中国人だ。その中国はこれまでに数千人を空路帰国させた。また先日は、解放されたインド人500人あまりが帰国を果たした。
だが、タイ国境にはまだ20カ国以上からの数千人がとどまっていて、タイ側の対応は追いついていない。
タワー氏は「ほとんど人道危機のような状況に陥りつつある。危機の中でも、これほど多くの国の人々が集まっているのはまれなケースだ」と訴える。
カンナビー氏は今年2月、DKBAと交渉したうえで260人の救出作戦を主導し、成功させた。当時、救出現場の映像には安堵(あんど)の表情を浮かべる集団が映し出されたが、試練はまだ終わったわけではない。
「今もタイの仮設避難所に足止めされている人が多い」と、カンナビー氏は言う。
その一方で、詐欺拠点にまだ残された人々の家族は、不安な気持ちで朗報を待ち続けている。
チェルシーさん(仮名)の夫は昨年4月、タイで技術支援の仕事の話があると言ってフィリピンの自宅を出た。チェルシーさんは2人目の子どもを妊娠中で、一家には収入が必要だった。
だが夫はタイの首都バンコクに着いた後、車でミャンマー国境の街メソトへ連れていかれた。「銃を持った兵士たち」によって無理やりミャンマー側へ渡るボートに乗せられた。チェルシーさんによれば、夫は1日17時間、無給でオンライン詐欺の仕事をさせられた。
夫は電話を使っているのが見つかり、12月から突然、3カ月にわたって応答がなくなったが、先日ようやく解放された。
元被害者やその家族がCNNに語ったところによると、仕事を拒否したりノルマを達成できなかったりすると殴られ、暗い部屋に閉じ込められ、無理な姿勢を強いられたりテーザー銃で撃たれたりした。解放されるには巨額の身代金を払うか、代わりに働く人を連れてくるしかなかったという。
CNNはミャワディの詐欺センターで被害者が撮影した映像を入手した。正体不明の男がバスルームの床の上で、パキスタン人の男性に電気ショックを加えて拷問し、殴りつけている。男性は叫び声を上げ、やめてくれと訴えていた。
CNNが話を聴いた家族らは、詐欺拠点への注目が高まって取り締まりが強化された結果、本人がミャンマー国内の別の拠点へ移されたり、暴力を受けたりしているのではないかと案じている。
ある中国人女性のきょうだいは、最近思いがけず解放されるまで、何カ月も消息が途絶えていたという。
この女性は「2月に解放が始まってから自由への監視は一層厳しくなり、互いにしゃべることさえ禁止されている」「内部がどんなにひどい状況か、想像もできない」と話した。