国連の人道支援機関、財務危機で500人規模の削減へ
(CNN) 緊急災害対応を担う国連人道問題調整事務所(OCHA)は11日、世界規模で人員を2割削減し、9カ国での事業を縮小する意向を明らかにした。深刻な財務危機と世界的な活動要請の急増に直面しているという。
OCHAがウェブサイト上で共有した職員宛の書簡の中で、同機関を率いるフレッチャー所長は「乱暴な削減」に踏み切る理由として、6000万ドル(約86億円)近くに上る今年の資金不足に言及。人道活動の需要増加も複合的要因になっていると指摘した。
またカメルーン、コロンビア、エリトリア、イラク、リビア、ナイジェリア、パキスタン、トルコ、ジンバブエの各国では事業を撤退もしくは調整するとした。残る国や地域への対応強化を優先する狙いがあるという。
OCHAは60カ国以上で勤務する約2600人の職員のうちおよそ500人を解雇する計画。今後はより少ない地域に職員を集中させる方針だという。広報責任者がフレッチャー氏の書簡を引用して明らかにした。
OCHAはこれまでの数カ月、雇用の凍結や渡航制限などの緊縮措置で370万ドルの経費削減を行っていた。
フレッチャー氏は書簡で資金不足の厳しさを説明。苛烈な人員削減は財務の逼迫(ひっぱく)が原因であり、事業のニーズが低下したわけではないと強調した。
OCHAの規模縮小は、国連が進めるより広範な改革構想に沿うものともなっている。
OCHAは人員削減を持続可能性のために必要と位置づけるが、複数の支援団体はCNNの取材に答え、危機に陥った地域での支援能力が低下しかねないとの懸念を示す。
イラク首都バグダッドを拠点とする人権団体のある職員は、OCHAの規模縮小が同国での人道支援活動に相当の打撃を与える恐れがあると指摘。とりわけ女性の人権擁護の取り組みが影響を受けるとした。
その上で、OCHAの協力無しには自分たちの団体の職員も解雇せざるを得なくなるかもしれないと警鐘を鳴らした。