日本が世界に誇るウイスキー 蒸留所を訪ねて
中でも最も高く評価されている日本のウイスキーは(酒造会社ベンチャーウィスキーの「秩父」を除き)、日本の二大メーカー、サントリーとニッカの蒸留所で生産されている。
サントリーが「日本のウイスキー界に君臨する国王」であるのに対し、ニッカはいわば「けんか腰の負け犬」だが、戦場では引けを取らない。
サントリーは米国の蒸留酒最大手ビームを総額160億ドルで買収し、世界3位の蒸留酒メーカーに浮上した。一方、ニッカも輸出量が2006年から2012年の間に18倍に増えたという。
しかし両社の歴史は、ともに1923年に建設された山崎蒸溜所から始まった。
サントリーの創業者、鳥井信治郎は同年、「日本のウイスキーの父」竹鶴政孝を招き、日本初のウイスキー蒸留場を設立した。
竹鶴はウイスキーの蒸留技術を学ぶため、スコットランドに赴き、スコットランド人の妻を連れて帰国した。
竹鶴は、サントリーの前身である寿屋で10年間勤務した後、スコットランドと似た気候の北海道余市町で自分のウイスキー帝国を築くために同社を退社した。
日本のウイスキーツアー
ジャパニーズウイスキーのルーツを探る巡礼の旅は、大阪から電車で25分の山崎駅から始まった。
山崎蒸留所に向かう途中の道沿いには、昔ながらの家屋や竹林が点在している。思わず酔ってしまいそうなウイスキーの香りが山の澄んだ空気と混ざり合う。
山崎蒸留所は、スコットランドの最上級蒸留所と異なり、さまざまな形・大きさの単式蒸留釜のおかげで、同じ蒸留所内でさまざまな種類のウイスキーが生産できる世界でも数少ない蒸留所の1つだ。
3000以上の大樽が置いてある貯蔵庫は、蒸留所見学ツアーで見られる最も印象的な光景だ。
日本のウイスキー造りには、職人が仕事にひたすら没頭し、創造力を発揮する日本の伝統的な職人技が生かされているが、中でも大樽に使われる木については、これまでさまざまな実験がなされてきた。
樽材には、伝統的に樹齢200歳のアメリカン・ホワイト・オークが最適とされているが、山崎蒸留所は、ウイスキーに伽羅(きゃら)や白檀(びゃくだん)の香りを付けるために、日本産オーク(ミズナラ)を使用した樽も導入している。