高学歴の黒人・アジア系英国人、仕事では不利な立場に
ロンドン(CNN Business) 英国における少数民族の移民の子どもたちは、白人の英国人の子どもたちより高学歴でも雇用される可能性が低いことが、6月29日に発表された新たな研究によって明らかになった。
インド、パキスタン、バングラデシュ、黒人のカリブ海諸国出身の移民の子どもたちは、平均して経済的に貧しい出身であるにもかかわらず、多数派の白人よりも高学歴だという。だが英国の民間シンクタンク、財政研究所(IFS)の報告書によると、高学歴であることが必ずしも労働市場での成功には結びついていない状況だ。
同報告書は、不平等に関する広範な調査の一環として作成され、2011年までの40年間にわたる英国の国勢調査データを使用して、家族内における世代別の学歴や職歴などを調査した。IFSは声明の中で、「(少数民族の2世は)教育機関を卒業後、多数派の白人と比較して雇用される可能性が低く、一部の民族は管理職や専門職に就く確率が低い」と指摘した。
雇用格差は同じような経済的背景を持つ家庭で比較しても、依然として問題となってくる。その場合、教育の差はより顕著になっているにもかかわらずだ。
例えば、労働者階級出身のインド系、バングラデシュ系、カリブ系黒人の移民2世の女性は、同じような恵まれない環境で育った白人の同世代の女性と比べて、大学や大学院などの高等教育機関の資格を取得する可能性が20ポイント以上高く、インド系やバングラデシュ系移民の男性だとその割合は30ポイント以上高くなる。それでも彼らは、白人の同世代の若者と同様に仕事が得られるわけではない。
英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの教授で、同報告書の共著者であるルシンダ・プラット氏は「教育面における彼らの目覚ましい成功は祝福すべきだが、なぜそれが仕事面では成功に結びつかないのかという、厳しい問いかけをしなければならない」と述べた。
なお、同報告書は英最大の経済団体である英産業連盟(CBI)、英労働組合会議(TUC)、平等人権委員会(EHRC)が、英政府に対して民族間の賃金格差報告の義務化を求める共同書簡に署名した数日後に発表されている。
この共同書簡では、こうした報告が「雇用主が職場で少数民族が直面している特定の障壁を特定し、検討し、対処することを可能にする」と指摘。また、今年初めに政府の委員会が公表した英国における人種・民族間の格差に関する勧告内容を上回るものであるとしている。
プラット氏はCNN Businessに対し、「労働市場には差別が存在すると確信しているが、この問題は明らかに解決されていない」とコメントし、民族間の賃金格差に関するデータの公表は格差是正に一役買うだろうと述べた。
だがプラット氏によると、雇用格差は差別だけが問題ではないという。「より良い仕事に就く上では特に、社会的ネットワークのようなものが重要となりうる」と同氏は話す。これに加え、少数民族が特定の地域に集中していることを考えると、職種を決定づける地域の労働市場における力学も関係し得るという。
またプラット氏は雇用格差について、「単に経済的に恵まれないから、差別があるからと過度に単純化しようとすると、双方が関連していることを認識できなくなる」と指摘した。
一方、英国の保守党議員たちは、先月初めに発表された議会報告書「忘れられた人々:労働者階級の白人の生徒たちがいかに期待を裏切られ、それをどう変えていくのか」を支持したことで、教育制度の不平等を武器に文化戦争をあおっていると非難されている。
議会報告書では、「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」の抗議活動をきっかけに「白人の特権」という言葉が広まったことで、「困難に直面している白人を組織的に無視する」ようになった可能性があると主張している。
IFSの報告書によると、11年までに成人した少数民族の移民2世のうちインド系の16%、パキスタン系の7%、バングラデシュ系の5%、カリブ系黒人の14%が経済的に恵まれた出自であるのに対し、白人の英国人はその割合が29%と少数民族を上回った。
プラット氏は「貧しい白人の子どもたちの低い教育的成果を、不利な立場にあるからと決めつけるのは軽率だ」とコメントした上で、「貧しくても白人であれば、少数民族の人たちと比べて労働市場で不利になることはない」と話している。