マスク氏批判の意見広告、米紙ワシントン・ポストが掲載見送り 受け入れ姿勢から一転

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米紙ワシントン・ポストの社屋=2024年6月5日、ワシントン/Andrew Harnik/Getty Images

米紙ワシントン・ポストの社屋=2024年6月5日、ワシントン/Andrew Harnik/Getty Images

(CNN) 米有力紙ワシントン・ポストは、トランプ政権で「政府効率化省(DOGE)」トップを務めるイーロン・マスク氏の解任を求める意見広告の掲載を見送った。

掲載が見送られたのは、ロビー団体が11万5000ドル(約1700万円)で掲載する契約を結んだ2件の広告で、いずれも18日の紙面に掲載されるはずだった。このうち紙面を包むように配置されるラッピング広告は、ホワイトハウスの背後で高笑いするマスク氏の写真に、「この国を動かしているのは誰か。ドナルド・トランプかイーロン・マスクか」という文字をあしらっていた。

「イーロンは騒ぎと混乱を引き起こし、私たちの暮らしを危険にさらしている。しかし彼は自分以外の誰に対しても責任を負わない」「憲法は1度に1人の大統領しか認めていない」と同広告は続けている。

この広告を出稿したロビー団体のコモン・コーズとSPLCは、米議員に対して「これ以上の被害が出る前に行動を」と呼びかける嘆願に賛同を呼びかけており、これまでに9万5000を超す署名を集めている。今回の広告はその運動の一環だった。

マスク氏は、連邦政府機関職員の人員削減に大なたを振るう裁量権をトランプ大統領から与えられているように見える。最近の訴訟がある程度の妨げになっているものの、自由裁量を与えられたマスク氏の行動は、ホワイトハウスの実権を握っているのはマスク氏ではないかとの臆測を呼んだ。

コモン・コーズは今月11日に広告の原稿をワシントン・ポストに入稿したが、その3日後、掲載はできないと同紙から通告されたという。同紙との契約は済ませており、最終審査を待って掲載料を支払う予定だった。内容を変更して掲載できないかと問い合わせても、単純に掲載はできないと告げられたといいい、「理由を尋ねても、教えられないという返事だった」と同団体広報は話している。

もう一つの中面広告はラッピング広告を反映した内容で、マスク氏の写真に「誰もイーロン・マスクを選挙で選んでいない」の文字をかぶせていた。ワシントン・ポスト紙はこちらの広告の掲載には応じる意向だったが、コモン・コーズ側が断った。

ポスト紙は、特定の広告に関する社内の判断についてはコメントしなかった。オーナーのジェフ・ベソス氏がこの判断にかかわっているのかどうかについてもコメントを避けている。

コモン・コーズのバージニア・ケイス・ソロモン代表はCNNの取材に対し、憂慮すべき判断だとの見方を示し、「民主主義は暗闇の中で死ぬ(Democracy Dies in Darkness)」という同紙のスローガンを念頭に、「自由な報道が恐怖や服従の場から操作されるときにも民主主義は死ぬということを(同紙は)忘れているらしい」と指摘した。

「ウォーターゲート事件で調査報道の柱だったワシントン・ポスト紙が、権力者に異を唱える気がないのかどうか、我々は自問せざるを得ない」とソロモン氏は話す。

ホワイトハウスはトランプ大統領が嫌う記事を掲載したポリティコやAP通信などの購読を中止しており、「メキシコ湾」の名称を「アメリカ湾」に変更しなかったAP通信は、大統領執務室や大統領専用機への立ち入りを無期限で禁止された。

反マスク氏のラッピング広告は、ホワイトハウスでおよそ500の購読者に届くはずだった。もし掲載されていれば、同紙は政権に狙い撃ちにされる恐れがあった。

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