絶滅した巨大類人猿、最も近い現存種はオランウータン 遺伝子分析で判明
(CNN) 30万年前に絶滅した大型の類人猿について、残されたあごと歯の化石の遺伝情報を分析したところ、現存する種で最も近いのはオランウータンであるとの結果が出た。13日刊行の科学誌ネイチャーに論文が掲載された。
身長約3メートルで体重はゴリラの2倍と、映画「キング・コング」さながらの巨体を誇るこの類人猿は、かつて中国南部に生息していた「ギガントピテクス・ブラッキー」。190万年前のものとみられるあごの一部の化石が1935年に発見されたものの、頭蓋骨(ずがいこつ)や他の部位の骨が見つかっていないことから、その実像はなぞに包まれていた。
現存する類人猿で最も近い種は何なのかを突き止めるべく、今回研究チームは臼歯(きゅうし)のエナメル質にたんぱく質構造解析を行い遺伝情報を抽出。
その結果、オランウータンとの進化的な関係が明らかになったという。
「ギガントピテクス・ブラッキー」のあごの骨/ Prof. Wei Wang/Theis Jensen
ただコペンハーゲン大学のエンリコ・カッペリーニ准教授はこの研究について、ギガントピテクスの見た目がオランウータンと同様であることを必ずしも意味しないと指摘。現時点で得られる情報は、当該の類人猿の生理機能、生態、外見に関して新たな知見を与えるものではないと強調した。
一方、たんぱく質を解析することで遺伝情報を得る上記の新手法によって、今後研究者らは従来よりも古い年代の化石から人類進化の歴史に関するデータを入手できるようになる見通しだ。今回の論文の筆頭著者を務めたコペンハーゲン大学のフリード・ヴェルケル氏は「今まで、遺伝情報を読み取れる化石の年代は、高温多湿地域の場合、1万年前が限度だった」と話す。
中国南部の亜熱帯地域に由来する190万年前の化石から遺伝子素材が回収できたのは今回が初めて。人類の祖先の化石は主に亜熱帯地域で見つかっていることから、新たな解析方法が確立すれば人類進化の過程の解明につながる情報をさらに得られる可能性があるとヴェルケル氏は期待を寄せる。