世界の氷河、最大半分消失の恐れ 気候変動対策の目標達成でも 新研究
(CNN) 気候変動を巡って各国が掲げる野心的な目標が達成された場合でも、世界の氷河のうち最大で半分は今世紀末までに失われる恐れがある。5日刊行の科学誌サイエンスに掲載された論文で明らかになった。
世界の山岳には21万5000カ所を超える氷河が存在し、降雪と気温上昇によりそれぞれ拡大、縮小している。これらの氷河は地球上の20億人近くに新鮮な水を提供する一方で、海面上昇の主因ともなる。海面の上昇は、世界の沿岸地域に暮らす数十億人に脅威をもたらす。
研究者らは新たな衛星データを用い、過去数年間に起きた氷河の変化を観察。それに基づき異なる複数の気候変動シナリオを作成した。具体的には上記の21万5000カ所超の山岳氷河(グリーンランドと南極の氷床を除く)が今世紀末までにどうなるかについて、1.5度、2度、3度、4度の気温上昇をそれぞれ想定した上で予測した。
その結果、気温が4度上昇した場合、今世紀末までに氷河の質量は2015年と比較して41%失われる見通しであることがわかった。
仮に気温の上昇幅が1.5度の範囲に収まったとしても、氷河の質量は今世紀末までに26%失われるという。各国は上昇幅を1.5度に抑えることを目指しているが、現在のところ達成できる見込みはない。最良の気候変動シナリオの下でも、世界の氷河の最大半分は2100年までに消失するというのが論文の結論だ。
国連によれば、各国が現状公約している気候変動対策では2100年までに気温が2.1~2.9度上昇すると予測される。これが実現すると、欧州の中央部や北米西部、ニュージーランドなど、複数の地域の氷河はほぼ完全に消失する可能性がある。
氷河の縮小は、海面上昇にも明確な影響を及ぼす。研究者らの予測によると、1.5度の温暖化で海面は90ミリ上昇。4度なら154ミリ上昇するという。
ただ大規模な氷河の消失は避けられないものの、あらゆる気候変動対策の実施はさらなる縮小に歯止めをかけるのに寄与すると、研究者らは指摘。米カーネギーメロン大学の氷河学者で今回の論文の筆頭著者を務めたデービッド・ラウンス氏は「少しでも気温の変動を抑えられれば、それが非常に大きな影響を及ぼす可能性もある」と述べた。