「死の病菌」まき散らすゾンビゼミ、大発生と重なる自然界のスペクタクル

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米ジョージア州で先月27日に見つかった周期ゼミの幼虫/Carolyn Kaster/AP

米ジョージア州で先月27日に見つかった周期ゼミの幼虫/Carolyn Kaster/AP

(CNN) 今年の春は、10年以上も土の中にいたセミが何十億匹も同時にはい出す大発生が予想される。樹上で大きな声で鳴き、メスを呼び寄せるオスのセミ。ところが中には病菌に体を乗っ取られ、ゾンビのように操られて菌をまき散らすセミもいる。

この病菌はセミの生殖器を破壊して腹部を病菌の胞子に入れ替え、そのセミを操って盛んに交尾させる。こうして「死のソルトシェイカー」(研究者)と化したセミがさらに病菌をまき散らす現象は、まるでホラー映画そのものだ。しかしこの病菌「マッソスポラ」に関する限り、「事実の方がSFよりもはるかに奇異」だと米コネティカット大学のジョン・クーリー准教授は解説する。

周期ゼミは木の枝で産卵し、孵化(ふか)した幼虫は地面に落ちて土にもぐる。種によって13~17年間、樹液を吸いながら地中で過ごし、成虫になる日が近づくとはい出してくる。しかし、マッソスポラに感染するのが土にもぐる時なのか地中から出た時なのか、あるいはどのような仕組みで感染するのかも分かっていない。

セミを操る病菌マッソスポラ

セミは胞子が体内に入り込んだ瞬間から病菌に操られる。感染したセミそれぞれの腹部で病菌の胞子が大量に蓄積され、やがて生殖器を含むセミの下腹部が脱落。生殖器と腹部があった場所に、白い胞子の塊が露出して見えるようになる。「まるでチョークの粉の中に落としたドロップが、セミの後ろにくっついているように見える」とウェストバージニア大学のマット・カッソン准教授は言う。

セミはこの状態になっても盛んに交尾しようとする。病菌に操られて性欲が異常に亢進(こうしん)したセミを、カッソン氏らは「ハイパーセクシュアル」状態と形容。感染したオスは交尾相手のメスを盛んに呼び寄せながら、同時に行動を変えてオスもおびき寄せる。健康なメスのセミは羽ばたきでオスを誘う。ところがマッソスポラに感染したセミは、オスもメスも羽ばたいてオスをおびき寄せ、相手を感染させてしまう。

しかも感染したセミが病菌をまき散らす手段は交尾だけではない。

「周期ゼミの生殖器は連結式だ。脱落すると裂ける。つまり、別のセミの生殖器をくっつけて歩き回るセミがいる」(クーリー氏)

感染したセミは、病菌の胞子が裂けると下腹部がないまま飛び回り、茶色い胞子の雨を降らせる「死のソルトシェイカー」(カッソン氏)と化す。この空飛ぶソルトシェイカーがまき散らした胞子が次世代のセミを病菌に感染させ、10年以上たって地面からはい出した感染ゼミが、同じことを繰り返す。

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