ナスカの地上絵、AI活用で新たに303個発見 目的めぐる謎に光

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AIを活用した研究で、新たなナスカの地上絵の存在が明らかになった/Yamagata University Institute of Nasca via CNN Newsource

AIを活用した研究で、新たなナスカの地上絵の存在が明らかになった/Yamagata University Institute of Nasca via CNN Newsource

(CNN) ペルーで調査に当たる考古学者のチームがAI(人工知能)の助けを借り、これまで存在の知られていなかったナスカ砂漠の地上絵303個を発見した。

地上絵には鳥や植物、クモ、頭飾りを付けた人間のような形象、切断された頭部、ナイフを持ったシャチなどが描かれている。

米国科学アカデミー紀要(PNAS)に先月23日付で掲載された論文によると、この発見により既知の地上絵の数はほぼ倍増した。ナスカの地上絵は石や砂利を動かして地面に形成された謎の芸術作品で、その年代は2000年以上前にさかのぼる。研究チームの発見は、地上絵の謎に包まれた目的についても光を当てる内容になっている。

ナスカの地上絵はペルー南岸から50キロ内陸にあり、20世紀初頭に砂漠で発見された。海抜500メートルの地点に描かれた地上絵が長い歳月を経て今なお残っているのは、乾燥した砂漠地域ゆえに人口がまばらで、洪水の影響を受けず、作物の生育にも適さないためだ。

今回の研究によると、近年はリモートセンシング技術の使用により絵の発見ペースが上がっていて、2000年から20年かけて年平均19個の地上絵が見つかった。ただその後、候補の絞り込みにAIを活用することで発見ペースが一気に加速しており、「考古学的発見に革命」をもたらすことが期待されている。

山形大学の坂井正人教授(考古学)率いる研究チームは、20年の時点で確認されていたナスカの地上絵430個の高解像度画像を使って物体検出AIモデルを訓練し、新たな地上絵の発見を実現した。米IBMのトーマス・J・ワトソン研究所の研究者らもチーム加わった。

大きな課題となったのは、画像の数が限られていることだ。通常、こうしたAIモデルの訓練には数万単位の画像が使用されるという。

今回新たに発見された頭飾りを付けた人間らしき形象の地上絵/Yamagata University Institute of Nasca via CNN Newsource
今回新たに発見された頭飾りを付けた人間らしき形象の地上絵/Yamagata University Institute of Nasca via CNN Newsource

ナスカの調査現場を絞り込む

研究チームは砂漠で見つかっている2種類の地上絵のうち、比較的小型のより具象的な絵に焦点を当てた。具象的な地上絵は通常長さ9メートルほどで、より大型の線タイプの絵に比べ特定が難しい。線タイプのものは長さ90メートルに上り、航空調査で比較的容易に見つけることが可能だ。

AIモデルは決して完璧ではなく、629平方キロの砂漠地帯に散らばる4万7000カ所以上の候補地が提案された。

研究チームは提案された候補地を絞り込んでランク付けし、「非常に有望」な候補地1309カ所を特定。有望な候補の割合は、AIモデルが提案した36カ所につき1カ所にとどまった。

それでも論文の著者らはAIの活用について、捜索範囲の絞り込みに必要な労力を減らす観点から、状況を一変させる「ゲームチェンジャー」だったと指摘する。研究によると、AIにより「ナスカ台地での貴重な的を絞ったフィールドワークに焦点を移す」ことが可能になったという。

研究チームは22年9月から23年2月にかけ、このモデルの正確性をナスカ砂漠で検証。徒歩やドローンを活用して有望な地点を調査し、最終的に303個の具象的な地上絵を「地上検証」した。

新たに見つかった具象絵303個のうち、178個はAIモデルが提案したもので、125個は追加で見つかった。このうち66個はAIで発見した地上絵群の一部で、残り59個はAIの助けを一切借りずにフィールドワークで発見された。

ナスカの地上絵の謎を解読する

ナスカの人々が地上絵を描いた理由は明らかになっていない。主な仮説としては、地上絵が聖なる空間を形成していて、おそらく巡礼の場所になっていたのではないかとの説がある。暦や占星術、灌漑(かんがい)、走ったり踊ったりといった運動、コミュニケーションに一定の役割を果たしていたと提唱する説もあるという。

新たに見つかった地上絵や既知の地上絵を分析した結果、興味深い傾向が浮かび上がったと、坂井氏は指摘する。

大型の線タイプの地上絵は上空から簡単に見分けが付き、動植物などの野生生物を描いていることが多い。小型の面タイプ(レリーフタイプ)の地上絵には人間や、人身供犠(じんしんくぎ)を含む人間に絡む事象、家畜などが描かれている。

調査では砂漠に刻まれた道の存在もより明確になった。こうした道の多くは、様々な地上絵グループのそばに位置していた。

研究によると、小型の地上絵は曲がりくねった小道に沿って描かれており、少人数で地上絵を見学したナスカの人々によって作られた道である可能性高いという。一方、大型の地上絵は地面に刻まれた直線や正方形、台形のネットワークのそばに分布していた。

論文によると、これらの大型の地上絵はおそらく巡礼の最後の儀礼的な活動に使われていたとみられ、計画的な公共建築とみなしうるという。

坂井氏は、地上絵の正確な意味やその謎めいた目的を解読する作業が進んでいると説明。研究チームは将来的に論文を発表したい考えだ。

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