700年の歴史を誇る日本の木桶、現代風にアレンジして人気
(CNN) 簡素な桶(おけ)が芸術品と言われてもピンとこないかもしれないが、職人の中川周士氏が、京都にある自身の工房で制作した桶には数千ドルもの値が付き、根強いファンがいる。
滑らかで、手触りがよく、材料であるヒノキのいい香りがするこの木桶は、米や味噌(みそ)の保存から水浴びまで、実にさまざまな用途に用いられる。
1世紀にわたって受け継がれる中で磨かれ、700年の歴史のある伝統工法の上に築かれた職人技が作り上げた桶はまさに完璧な仕上がりで、桶を構成する板の継ぎ目がほとんど見えないほどだ。
中川氏のファンは増え続けており、作品の評価も高まりつつある。中川氏は最近、世界の優れた工芸作品に贈られる国際的な賞「ロエベ・クラフト・プライズ2017」のファイナリストにも選ばれた。
10歳で職人の道へ
中川氏の祖父、亀一氏は、今から90年前、わずか10歳の時に京都の老舗桶屋「たる源」で働き始めた。
そして亀一氏は45歳の時に自身の工房を開き、中川木工芸と名付けた。
現在、中川木工芸は、亀一氏の息子で中川氏の父である清司氏が後を継ぎ、日本の伝統工芸の工房として非常に高い評価を得ている。
過密スケジュール
中川氏は当初、父の後を継ぐことに抵抗があったが、京都精華大学美術学部立体造形を卒業後、家業で修行に入った。
中川氏は技術を習得するため、平日は10~12時間働いた。そして2003年、中川木工芸の姉妹工房という形ではあるが、滋賀県に自身の工房を開いた。
中川氏によると、一般的な桶は1日ほどで仕上がるが、ロエベ・クラフト・プライズに出展したような傑出した作品となると、仕上げるのに1カ月近くかかることもあるという。
変化する需要
清司氏や亀一氏の時代には、木桶に対する需要が当たり前のようにあったが、時代が変わり、大量生産されたプラスチック製の安価な用具が簡単に手に入るようになった昨今は、かつてのような需要はない。
そこで中川氏は、製品の設計や生産方法、さらに最終的には販売方法についても多少の修正を余儀なくされた。
中川氏は、人々の生活様式の変化によって木桶が使われなくなり、需要は減少したが、木桶には技と歴史と哲学があり、これをなくしてしまうのはもったいないと語る。