ボクシング女子、46秒で棄権のイタリア人選手が対戦相手に謝罪 パリ五輪
(CNN) パリ五輪ボクシング女子の試合で、開始46秒で棄権したイタリアのアンジェラ・カリニ選手が2日、対戦相手のイマネ・ケリフ選手(アルジェリア)に謝罪した。前日のこの試合を巡っては、ケリフ選手を非難するコメントがネット上に拡散する事態となっていた。
試合開始直後にケリフ選手のパンチを受けたカリニ選手は自身のコーナーに押し戻され、膝(ひざ)から崩れ落ちた。棄権によって敗れた同選手がケリフ選手と握手を交わすことはなかった。
試合を観戦した人々の一部からは、本大会へのケリフ選手の参加を疑問視する声が上がった。アマチュアボクシングを統括する国際ボクシング協会(IBA)は昨年3月、検査の結果により同選手が「出場資格を得るのに必要な基準を満たしておらず」、「他の女子選手に対して競技上の優位性を有していることが明らかになった」と発表。台湾の林郁婷選手と共に世界選手権での失格処分を下していた。
しかし国際オリンピック委員会(IOC)は、パリ五輪へのケリフ選手の参加を強く支持。マーク・アダムズ報道官はIBAの検査を「恣意(しい)的」だと一蹴し、ケリフ選手について「誕生時も登録上も女性であり、女性として生活してきた。女子のボクシング選手であり、パスポートの性別も女性だ」と強調。「これはトランスジェンダーのケースに該当しない」と付け加えた。
IBAはケリフ、林両選手にどのような検査を行ったのか明言していない。IBAによれば両選手は男性ホルモンのテストステロンの検査は受けておらず、それとは別に認められた検査を受けたという。具体的な検査内容は秘密とされている。
カリニ選手は2日、自身のケリフ選手への対応を謝罪した。伊スポーツ紙ガゼッタ・デロ・スポルトの取材に答え「対戦相手に申し訳なく思う」「IOCが彼女の出場を認めているなら、その決定を尊重する」と発言。「意図した振る舞いではなかった」「自分にとっての五輪が不本意な結果に終わり、怒りに駆られていた」と述べた。
試合後、ケリフ選手にはネット上での誹謗(ひぼう)中傷が相次いだ。有力な反トランスジェンダー論者や右派のコメンテーター、政治家は不正確な認識からケリフ選手を男性と呼び、騒動を利用して性自認を巡るより広範な文化戦争を扇動した。
米国のトランプ前大統領や起業家のイーロン・マスク氏、英作家のJ・K・ローリング氏といった著名人もケリフ選手の出場に批判的なコメントを寄せた。
五輪の選手村を訪れていたイタリアのメロー二首相は1日、「平等な試合ではなかった」との見解を示した。