イーロン・マスク氏、AIが引き起こす「文明破壊」に警鐘 自ら投資の傍らで
ニューヨーク(CNN) 起業家のイーロン・マスク氏が新たなインタビューの中で、人工知能(AI)は「文明破壊」につながりかねないと警鐘を鳴らした。マスク氏自身、自らが経営する多数の企業を通じてAIに深くかかわっており、新規のAIベンチャー設立もうわさされている。
「AIは、文明破壊の潜在的可能性があるという意味において、例えば航空機の設計や製造メンテナンスの不手際、自動車の不良生産よりも危険が大きい。その可能性がどれほど小さく見なされようとも、それは些細(ささい)ではない」。マスク氏はタッカー・カールソン氏のインタビューの中でそう語った。この内容は2部に分け、17日と18日に放送される。
一般消費者向けのAI製品が氾濫(はんらん)し、グーグルやマイクロソフトなどの巨大IT企業も進出する中で、マスク氏はこのところ、AIの危険性について繰り返し警告していた。マスク氏は先月、「制御不能」状態に陥ったAI開発競争を6カ月間停止させるよう訴える公開書簡にも署名した。
マスク氏は17日、「規制されるのは面白くない」としながらも、政府のAI規制を支持すると述べ、AIが「制御されているかもしれない」状態になったところで規制をかけたのでは手遅れになりかねないと指摘。「規制当局はまず、AIについて洞察するグループから始める必要がある。次に業界から意見を募り、その後ルール作りを提案する」と提言した。
マスク氏は何年も前からAIに警鐘を鳴らすと同時に、自らが出資する多数の企業を通じてAI軍拡競争にかかわってきた。
例えばテスラは毎年恒例の「AIデー」のイベントを主催し、AI関連の実績を披露している。マスク氏はまた、対話型AI「チャットGPT」の開発企業、オープンAIの創設メンバーでもある。ツイッターでは「世論操作の検知と発見にAIを利用する」計画だと先月のツイートで述べていた。
カールソン氏のインタビューの中でマスク氏は、グーグルに対抗するためオープンAIの創設に尽力したが、自分の「目がボールから離れた」と説明。今は巨大IT企業のマイクロソフトやグーグルが提供するAI製品のライバルを自ら創り出したいと述べ、「トゥルースGPTと呼べるものに着手する」と語った。トゥルースGPTについては「最大限の真実を追求するAI」と形容し、「宇宙を理解することに力を入れる」と説明。「害を与える以上に有益になるだろう」としている。
最近ではマスク氏は、オープンAIとチャットGPTに対抗できる生成型AIの新興企業の創設に乗り出したと伝えられている。英経済紙フィナンシャル・タイムズは先週、計画に詳しい人物の話として、マスク氏がAI研究者と技術者のチームを結成し、新規ベンチャーの投資家を募っていると報じた。同紙によれば、マスク氏は先月、X.AIという企業を設立したとされる。
カールソン氏のインタビューではツイッターの経営にも触れて「ある程度は否定的反応もあるだろうと思った」と述べ、同アプリの将来はいずれ世論が決めるだろうと語った。
自身は2009年からツイッターを使い始め、同アプリの方向性について「嫌な予感」を持つようになったと打ち明けたが、詳細は明らかにしなかった。その後、同社の取締役会や経営陣との話し合いに満足できず、ツイッターを買収することにしたと振り返っている。