シュルンプ・コレクション 尽きせぬ情熱が生み出した最高級の自動車博物館
シュルンプ兄弟のコレクション形成にまつわる物語の裏には、暗い側面もある。ブガッティの元レーサーだったフリッツ・シュルンプは、繊維事業の成功で得た資金を元手に、市場に出回るあらゆるモデルを買い求めた。この過程で、1963年、2台目のロワイヤルを手に入れることになる。
1960年代の後半、フリッツはこれまで秘密にしてきたコレクションを公開する決心を固め、その後10年は修理など展示に向けた準備に取りかかっていた。だがこの時、アジアの低価格製品に太刀打ちできなくなった欧州の繊維産業は、衰退の道を歩み始める。
財産の大部分を高級車に投じたシュルンプ兄弟は、事業の没落を食い止めることができなかった。借金を背負った兄弟はスイスに亡命、2人とも死ぬまでスイスに滞在した。
残された車の方はといえば、1977~79年にシュルンプの会社の元従業員たちが一般に公開。その後、フランス政府によって、解体や国外への持ち出しが出来ないよう歴史的な遺産として登録された。そして82年、地元自治体も含めた共同運営体制のもと、公式に博物館としてオープンしたのだった。
1989年以来、裁判所の命令により、博物館の名称には「シュルンプ・コレクション」という言葉が添えられている。スポーツカーへの空前絶後の情熱に取りつかれた兄弟の名誉のためだ。