コンクリートの塊が生み出すSFの世界――カメラが切り取った平壌
「建築も同じで、言わば写真家と被写体の間の駆け引きのゲームです。写真家が被写体に魅力を感じれば、その被写体には感情に訴えるものがあるわけです。また建築写真では光、角度、レンズといった外的要因も重要です。全ては被写体である建築を前にした写真家が何を感じるかにかかっています」
――では、オリビエさんは平壌の建築の何に魅力を感じたのですか。
「私は(北朝鮮で)建物や広場、構築されたスペースの前に立った時ほど感動したことはありません。北朝鮮の建物は非常に特殊です。なにしろ周りには、広告や看板、小さな喫茶店など、建物以外に目に入る物が何一つないのです。すべての建物が巨大なコンクリートの塊で、強力なエネルギーを発しています」
「また平壌の都市計画も大変ユニークです。すべてが左右対称で、整然と配置されています。構造物やさまざまな色の調和に加え、この独特の雰囲気を北朝鮮を訪れたことがない人に説明するのは容易ではありませんが、私は写真を通してそれらの光景の一部を伝えたいと考えました」
――平壌で何か驚いたことはありますか。
「平壌を訪問したのは今回が初めてではないので、平壌という都市の設計コンセプトは分かっていましたし、自分なりの第一印象はすでにありました。しかし、北朝鮮で写真を撮る際に、細かい部分や音、人々など、街の雰囲気全体を表現するのは難しいです。撮影しようとなると、平壌は他の都市とは全く異なる特別な都市なのです」