機内からリクライニングシートが消えつつある理由
ヒラー氏が言う特殊なレイアウトとは、1機体あたりに認められる最大乗客数のことで、航空業界用語ではしばしば「マックスパックス」と呼ばれる。現状では、全席エコノミークラスのエアバス「A321neo」ナローボディー機のマックスパックスは244席だ。ゆとりをもたせたビジネスクラスを前方に配置して、150席未満に収めている航空会社もある。
当然ながら、こうした機体に244席、あるいは230席以上を設ければ、最大限のゆとりをもたせることはできない。
だが近年シートメーカーは、座席の背もたれを薄くしたり、ひざの邪魔にならないところに構造機構を設置したり、すね周りのスペースを広げるなどして、ひざのあたりに余裕があるように感じさせる工夫を編み出してきた。
そうした工夫のひとつが、足元にゆとりのあるワンランク上の座席をエコノミークラスの前方に設けることだ。こうした座席はリクライニング機能やAC電源など完全装備であるのに対し、通常エコノミークラスはプレリクライニングシートで電源なし、またはUSBコンセントのみという場合が多い。
このようなタイプはハイブリット型キャビンと呼ばれる。次に搭乗する際にはぜひ探してみてほしい。座席の生地の色が列によって異なっていたり、可動型ヘッドレストがなかったり、座席のカバーも布製からレザーまで様々だ。
さて、プレリクライニングシートは全体的にプラスか、それともマイナスか?
筆者は航空ジャーナリストとして取材すること15年、飛行機の利用歴は40年以上にのぼる。あらゆる点を考慮した上で、現在使われている状況では――主に短距離フライトや数時間のフライトでは――プレリクライニングシートは総じてプラスだとの結論に達した。座席の前後でもめる可能性がなくなるというのが大きな理由だ。
だが長距離フライトとなると話は別だ。この場合、リクライニングは絶対残しておくべきだが、プレリクライニングシートで生まれる足元のゆとりはぜひ加えたいところだ。
とにもかくにも、機内ではマナーをわきまえ、シートを倒す前に後ろの席を確認して、倒す時はゆっくりとスムーズに倒すこと。そして機内食の時間になったら、できることなら乗員から頼まれなくてもシートを元に戻していただきたい。