中国が国境再開 中国人旅行者がまず向かう先は?
(CNN) 中国・蘇州に住むフリーランスのソフトウェアエンジニア、ダイ・シオンジエさん(32)は、「セロコロナ」政策解除後の最初の長期旅行を楽しみにしている。
ダイさんは行き先の有力候補として、韓国、欧州、日本、ニュージーランド、オーストラリアなどを挙げるが、最も注目しているのが米国だ。
米国はコンピューターサイエンスとIT産業の両方で世界をリードしているので、シリコンバレーや、マサチューセッツ工科大学(MIT)、スタンフォード大学などの有名大学を訪問したいとダイさんは言う。
中国政府が海外からの渡航者に対する隔離義務を撤廃し、新規パスポートの発給を再開した今、ダイさんのように海外旅行を希望する中国市民は多い。
最初の渡航先
大手オンライン旅行会社トリップドットコムの予約状況を見ると、渡航先として中国人に特に人気が高いのはシンガポール、韓国、香港、日本、タイで、さらに遠方の渡航先では米国、英国、オーストラリアが人気だ。
中国出境游研究所(COTRI)の最高経営責任者(CEO)、ウォルフガング・ゲオルク・アルト博士は、手軽で安い近場への旅行が最初に回復するのは当然と語る。
しかし、2023年の第1四半期は、出張、家族の再会、学生の旅行、医療目的といった観光目的以外の緊急の旅行にほぼ限定されるだろう、とアルト氏は付け加えた。
レジャー旅行の第1波
アルト氏は、レジャー旅行が増え始めるのは、パスポートの発給やビザの承認プロセスなどが円滑化し、フライトも全面的に再開される23年の第2四半期と見ている。
第1四半期を通じて消費意欲が高まり、4月ごろに、幸福や気晴らし、自然を優先した、近隣諸国への旅行に出かける中国人旅行者が増えるとアルト氏は予想する。
「(新型コロナウイルスの影響で)ストレスや問題を抱えた多くの中国人が、そこから逃れるために長い週末休暇を取ったり、ベトナム、タイ、カンボジアのビーチリゾートで過ごそうとしたりすることを考えても不思議ではない」とアルト氏は言う。
デジタルマーケティング会社ドラゴン・トレイル・インターナショナルのマーケティング・コミュニケーション担当ディレクター、シエナ・パルリスクック氏は、今年、裕福な旅行者に最適なビーチが売りの旅行先としてモルディブを挙げる。
モルディブは、特に高級志向の旅行者や美しいビーチで休暇を過ごしたい人々にとって魅力的な観光地で、世界の他の観光地と比べ、コロナの影響からの回復も早そうだ、とパルリスクック氏は言う。
最も魅力的な渡航先
新型コロナのパンデミック(世界的大流行)以前は、中国は出国者数と旅行者の支出額で、世界最大級の海外旅行市場だった。
国連世界観光機関(UNWTO)によると、中国人旅行者は19年に海外旅行に計1億5460万回行き、旅先での総支出額は約2550億ドルに上った。
COTRIのデータ予測によると、中国人旅行者による海外旅行(中国領の香港やマカオへの旅行を含む)は23年末までに1億1500万件(19年の4分の3)まで回復する可能性があるという。
そして海外旅行が回復すれば、コロナ前に人気だった渡航先が再び人気ランキングの上位を占めるとパルリスクック氏は予想する。
19年に中国人旅行者が最も多かったのはタイで、その数はおよそ1100万人に上り、海外からの旅行者全体の4分の1以上を占めた。