ホワイトハウス内に対立、感染拡大のあきらめが政権対応に反映
ワシントン(CNN) 新型コロナウイルスへの対応策の検討で、ホワイトハウス内で2つのアプローチが対立していることがわかった。タスクフォースの新たな顧問として迎え入れられたスコット・アトラス氏が米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ氏の影響力を上回り、トランプ氏やその側近はウイルスの感染拡大は不可避とあきらめて対応に注力している様子だ。
タスクフォースの医療専門家間の対立は数週間にわたってホワイトハウスを二分してきた。ファウチ氏や他のタスクフォースのメンバーはコロナウイルスの拡大阻止に積極的な姿勢を取る。一方、ホワイトハウスはアトラス氏のお墨付きを受け、経済活動を再開し、ウイルスの拡散を病院の対応能力を完全に上回らない程度に緩和する方向で進もうとしている。
タスクフォースの会合は最近、座長を務めるペンス副大統領が選挙戦で不在なことが多く、回数が減ってきている。また会合が開かれる場合でもファウチ氏は必ずしも出席していない。
2人の政権高官によると、政権の内部的な目標としては、ワクチンができるまで状況をコントロール可能な程度に保つこととなっている。
トランプ大統領とメドウズ首席補佐官はアトラス氏の意見により耳を傾けるようになっている。アトラス氏は神経放射線学者で、疫学よりも自由市場での医療経済政策を専門とする非主流派の医師だ。スタンフォード大学フーバー研究所のフェローで、ニュース専門局フォックスニュースへの出演がトランプ氏の目に留まり、ホワイトハウス入りした。
ホワイトハウスのコロナ対策顧問として新たに迎え入れられたスコット・アトラス氏/Andrew Harnik/AP/FILE
情報筋によるとそのタイミングは、トランプ氏が新型コロナウイルス対策調整官のデボラ・バークス氏の助言に嫌気がさし、また民主党のペロシ下院議長を称賛する発言をした同氏に懐疑的な見方を示すようになった時期と重なるという。
別の情報筋によるとアトラス氏はトランプ氏とほぼ毎日会話し、その時間は以前バークス氏などが行っていたトランプ氏へのブリーフィングにとって代わるようになってきた。トランプ氏が望んでいるとする経済再開や治療法の進歩などを含む対応策について進言しているという。
アトラス氏は8月31日、同氏が集団免疫の戦略を推進しようとしているとの報道を否定した。この戦略には国民の大部分がウイルスに感染することを容認する方針が含まれる。
だが、ある政権高官はアトラス氏が内部的に推し進める政策の多くが集団免疫の範ちゅうに入るものだと語る。アトラス氏は地域社会全体での検査の必要性を否定し、政府は高齢者の保護と検査に注力し、残りの経済は通常に戻すべきだと主張しているという。
トランプ氏の信頼を失ったとされるコロナ対策調整官のデボラ・バークス氏(右)。アトラス氏との間で意見の衝突が起きているという/Drew Angerer/Getty Images
こうした見解はアトラス氏とバークス氏など他の医療専門家との間の衝突を招いた。当局者によれば、衝突は一度ではないという。
議論を呼んだ無症状の人々に対する米疾病対策センター(CDC)の検査指針の変更に向けて先月開かれたタスクフォースの会合では、アトラス氏はシチュエーションルーム(危機管理室)でバークス氏とは反対側の席に座り、その変更を支持した。ファウチ氏はその日、声帯のポリープの除去手術で参加できなかった。
タスクフォースの医療専門家の間では、アトラス氏がメンバーに入る際、どんな人物なのか、どのような役割を担うのかについて疑問の声が上がったという。同氏の参加は、ファウチ氏やバークス氏がホワイトハウス内で科学に基づく対応方法を守ろうとする取り組みをより難しくさせる結果となっている。
当初はファウチ氏、バークス氏とも、アトラス氏の考えをよく理解しようと努め、定期的に対応を協議する付属のタスクフォースに加入させることも考えた。だが、参加してすぐに、他の医療従事者とは異なる考えを持ち、想像以上に大きな影響力を持っていることが明らかとなった。