バイデン大統領への警告
共和党が上院を奪還すれば、マコネル氏は多数派の指導者として民主党の大統領と再び対決することになる。14年の中間選挙で、当時のバラク・オバマ大統領と対決したように。
マコネル氏は16年、米国内で議員としての職歴を左右すると思われていた決定的場面で、前代未聞の行動に出た。オバマ大統領が最高裁判所判事に指名したメリック・ガーランド氏について投票を拒否したのだ。これにより最高裁判事のポストは1年以上も空席が続き、トランプ氏が保守派のニール・ゴーサッチ判事を指名して最高裁を大きく右に傾ける結果となった。
共和党が過半数を獲得し、来年にでも最高裁判事に欠員が出た場合、バイデン大統領が指名する候補者に賛成票を投じるかという質問に、マコネル氏はコメントを控えた。代わりに、大統領はいかなる政府機関や司法機関の任命を行う際にも、共和党と協議しなくてはならないだろうとクギを刺した。
「大統領が就任後2年間に行った任命の大半は行き過ぎだった」とマコネル氏。「判事だけではない。政府幹部や委員会も含めてだ。任命に関して我々は、もっと話し合いを重ねる必要があるという立場を取るだろう。その前に、我々から提案することも必要かもしれない」
マコネル氏は、共和党と政府が「任命について相手に反応するだけでなく、話し合いをするべきだ」と述べた。
共和党が過半数を奪還すれば、「ゴールライン近くから物事を見られる」ようになるとマコネル氏は主張する。そうした主張の真偽はまもなく試されるだろう。一部の共和党下院議員はすでに、バイデン大統領の弾劾動議やアレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官に対する調査の可能性を検討している。
共和党下院議員はそうした弾劾協議をあきらめるべきかという質問に、マコネル氏は回答しなかった。
「私から共和党下院議員に助言することはない」とマコネル氏は言い、共和党が過半数を取ればバイデン大統領も穏健派寄りになるだろうと主張した。
オバマ大統領時代にバイデン氏と財政法案を可決させたほか、2人が近しい間柄だと言われているにもかかわらず、両者はほとんど言葉を交わしていない。マコネル氏も、バイデン氏と最後に話した時がいつなのか「覚えてもいない」と言う。「ずいぶん前のことだ」
同数上院でのマコネル氏
上院で民主・共和が同数の議席を占める状態が全米史上もっとも長く続いた今会期、新型コロナウイルス救済法案や気候変動対策などを盛り込んだ法案の可決に向けて一致団結する民主党をマコネル氏は押しとどめてきた。だがバイデン政権最大の党派を超えた成果の一部にも寄与し、大規模なインフラ法案や銃規制法案、半導体業界を支援する法案などを支持した。いずれも上院議員や下院幹部、トランプ氏など大勢から反発を受けた。
マイク・ブラウン上院議員(インディアナ州選出)は、こうした問題に対するマコネル氏の姿勢を懸念しているかという質問に「はい」と答えた。
「共和党からの提案に、1人でも民主党議員が賛成票を投じたことがあったか」とブラウン議員は尋ね、マコネル氏が選挙年の公約を掲げなかったと批判した。
「無党派層にアピールして国の政権を取るつもりなら、『選挙の後に伝えよう』と言う以上のことが必要だ」とブラウン氏は語った。
マコネル氏本人は、共和党が上院で過半数を占めていた時も、法案を議場に提出する前に共和党内で過半数から支持を得なくてはいけないという考えにしばられたことはないと主張する。オバマ大統領時代にも、バイデン氏と協力して3つの財政法案を可決させた。ただし、党内からは多くの反発を招いた。
「何もしたがらないと思われるのは、国にとっても、党にとっても得にはならないと思う」とマコネル氏は言い、自らの立場を擁護した。
多数派に戻り、政策を打ち出すには、ひとつ議席を増やすことが必要だ。中間選挙の状況が共和党に有利だとはいえ、共和党が上院奪還に向けて険しい道に直面していることを考えれば、状況が厳しいことも分かっている。
アドインパクトのデータによれば、中間選挙が終わるまでにマコネル氏率いるSLFは2億900万ドル(約300億円)、加えて系列のNPO団体「ワン・ネーション」は7100万ドル(約100億円)を全米の広告費に投入することになるだろう。
「マコネル氏はすでに驚くような額の資金を集めて全米の共和党候補者をサポートしている」とミット・ロムニー上院議員(ユタ州選出)は語った。「マコネル氏はやるべきことをしている」
選挙戦も終盤を迎え、マコネル氏のグループはアリゾナ州の共和党候補ブレイク・マスターズ氏への多額の資金投入を見送った。もっともマコネル氏本人はこれについて、共和党の主要献金者ピーター・ティール氏や同氏の外部団体と「資金の割り当て」について話し合った結果、選挙戦の行方を見守ることにしたと主張している。マスターズ氏は「勝てる公算が十分ある」とマコネル氏は言う。
「押さえなくてはならない選挙区がたくさんある」とマコネル氏は言い、カギとなる激戦州を地図上に示した。
「こうした州の本選挙活動は、悲しいほど資金が不足している。NRSCのせいではなく、候補者の選挙陣営のせいでもない」とマコネル氏。「間違いなく我々、SLFが責任の大半を担っている」