ゼレンスキー氏の歴史的な米首都訪問、5つのポイント
米国人の心情をウクライナの苦難につなぎ留めるため、ゼレンスキー氏は同国がもうすぐ電気のないクリスマスを迎えようとしているとの話を持ち出した。ロシアは軍事行動を通じて、ウクライナ国内の電力供給の遮断を図っている。
またゼレンスキー氏は、一部の共和党議員を含む多くの米国人がウクライナへの巨額の支援に疑問の声を上げているのを念頭に置き、支援がウクライナ1国にとってのみ重要なわけではないと強調。「今回の戦いによって、我々の子や孫がどのような世界に生きるのかが決まる」と訴えた。
その上で、「あなた方の資金は慈善事業ではなく、世界の安全保障と民主主義への投資だ。それらについて我々は、最も責任あるやり方で対処する」と、付け加えた。
以前からの提案をようやく受け入れたゼレンスキー氏、武器も獲得
ロシアがウクライナで戦争を開始した当初、ゼレンスキー氏は首都キーウ(キエフ)から自身を脱出させようとする米国の提案を拒否。「欲しいのは武器であって乗り物ではない」と返答していた。
10カ月後、同氏はそれらの両方を手にした。今回の訪米実現に当たっては、米国とウクライナの当局者らが10日がかりで危険な戦時の移動を調整。目的はロシアの侵攻に抵抗するウクライナへの支援を結集させることにあった。
ゼレンスキー氏の到着直前、バイデン政権はウクライナに対する20億ドル近い追加の安全保障支援を発表。この中にはゼレンスキー氏が数カ月にわたり要請していた高性能の地対空ミサイル「パトリオット」も含まれる。
訪米を検討するに当たり、ゼレンスキー氏は顧問らに対し、米国との二国間関係に著しい進展が見込めないのであればワシントン行きを望まない考えを示していたという。事情に詳しい情報筋が明らかにした。同氏は米国によるパトリオット供与の決定を、両国関係の大きな転換ととらえた。
それでもバイデン氏と並んで立ったゼレンスキー氏は、率直に当該のパトリオットミサイルシステム1基では不十分だとの考えを表明。「もっとパトリオットが欲しい」「申し訳ないが、我が国は戦争中なので」。ゼレンスキー氏がそう言うと、バイデン氏は笑った。
複雑な関係の中での共同戦線
議会での演説で、ゼレンスキー氏は改めて米国の支援が十分だとは思わないと改めて訴えた。同氏が率直により多くのパトリオットを要求し、バイデン氏がそれに対し気楽な反応を示したやり取りからは、世界で最も複雑な部類に入る両国の関係が垣間見える。