トランプ氏の免責特権巡る主張、控訴裁の審理でわかったこと
「パンドラの箱」
サウアー氏は、大統領経験者らによる在任中の行動を訴追することを認めれば、今回と同じような訴訟が相次ぐ可能性があると指摘した。理論的にはバイデン氏やオバマ元大統領、ブッシュ(子)元大統領に対する訴追にもつながるとし、「職務上の行動を巡る大統領の訴追を認めれば、パンドラの箱を開けることになるだろう。この国にとって取り返しの付かない状況になるかもしれない」と警鐘を鳴らした。
サウアー氏によると、判事らが絶対的な大統領の免責特権を認めない判断を下した場合、たとえばバイデン氏については大統領退任後、メキシコとの国境地帯の管理で誤りを犯したと申し立てれば訴訟が成立するという。
ブッシュ氏にも誤った主張に基づくイラク戦争の開始、オバマ氏にも国外にいる米民間人に対するドローン(無人機)攻撃の承認といった、公務に関する物議を醸す疑惑がそれぞれ存在しており、これらを訴追できるようになるのではないかと、サウアー氏は示唆した。
トランプ氏は法廷で発言せず
ジョン・サウアー氏の発言を座って聞くトランプ氏(右)/Bill Hennessy
トランプ氏は9日の審理に出席したが、出廷及び退廷の様子をカメラが捉えることはなかった。カメラは法廷に入ることを許されなかったものの、審理の音声は放送された。
スミス氏も出廷しており、トランプ氏の座る弁護側の席からは約6メートルの距離にいた。スミス氏の弁論中、トランプ氏はメモを取り、サウアー氏に手渡していた。
アイオワ州での共和党の党員集会まで1週間を切っていたが、トランプ氏はこの日の審理に出席することを選んだ。決断の背景には、同州での支持率で十分なリードを保っていることと、自身への刑事訴追にいかに対抗するかが既に選挙戦略における重要課題となった状況があるとみられる。
トランプ氏は10日にアイオワ州へ移動し、FOXニュースの主催する対話集会に出席する予定。翌11日にはニューヨークへ戻り、民事の詐欺裁判の最終弁論に立ち会うとみられる。
控訴裁での審理の後、トランプ氏はカメラに向かって「大統領として、免責特権は必要だと感じる。極めてシンプルだ」と語った。