米コロンビア大留学生、摘発恐れて出国 デモ不参加も拘束されビザ取り消し

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ランジャニ・スリニバサンさん(37)/Courtesy Ranjani Srinivasan

ランジャニ・スリニバサンさん(37)/Courtesy Ranjani Srinivasan

(CNN) 米コロンビア大学の留学生がまたひとり、移民税関捜査局(ICE)の標的にされた。拘束されることを恐れて米国からの出国を余儀なくされた留学生は、虚偽の主張に基づいてトランプ政権に在留資格を取り消されたと訴えている。

出国したのはフルブライト奨学金を受けていたインド国籍のランジャニ・スリニバサンさん(37)。昨年コロンビア大学で行われたデモには参加していなかったといい、言論の自由を行使したことで標的にされたと訴えている。

トランプ政権は、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘に対する抗議デモに参加した留学生を移民当局による取り締まりの対象にすると宣言。国土安全保障省は対象となるコロンビア大学の留学生の1人として、スリニバサンさんを名指ししていた。

スリニバサンさんは2016年に渡米してハーバード大学の大学院に入学した。弁護士によると、何度か抗議デモに参加したことはあったものの、学生がコロンビア大学のハミルトンホールを占拠した昨年のデモには参加していなかった。

この晩、友人と外出したスリニバサンさんは、コロンビア大学のアパートに帰宅しようとしたところ、警察が通りを封鎖していて自宅に近づくことができず、混乱の中で拘束された。スリニバサンさんは解散命令に従わずに歩道をふさいだとして裁判所に呼び出されたが、いずれも不起訴となって処分は受けていない。

SNSでの活動は、パレスチナ自治区ガザ地区の戦闘に関連した人権侵害を伝える投稿の共有または「いいね」に限られており、23年12月には「パレスチナ解放」を支持する建築史家協会の公開書簡に署名していた。

コロンビア大学には20年から在籍しており、建築を専攻して大学院を今年卒業する予定だった。

先週、米国から出国した後、大学の在学資格は何の説明もなく取り消されたといい、これまで5年間かけて目指してきた学位を取得できるかどうか分からないと話している。

「ビザを取り消されて学生の身分も失い、私の人生と将来が覆った。私が間違ったことをしたためではなく、言論の自由を行使したために」。スリニバサンさんはCNNに寄せた声明でそう訴えている。

コロンビア大学は、スリニバサンさんの在学資格に関して取材に応じなかった。

移民捜査員が令状なしに自宅に

スリニバサンさんが自分のビザの問題のことを知ったのは今から2週間前だった。在インド米領事館から連絡があり、学生ビザが失効したと告げられた。

コロンビア大学の留学生課に問い合わせたところ、ビザの失効は時折あることで、出国した際に新しいビザを申請すれば済むと説明された。

それまでの間、留学生としての法的資格は保たれ、バーナード・カレッジでの教職も継続できると大学から言われたという。

移民税関捜査局の捜査員が自宅にやって来たのはその電話の最中だった。スリニバサンさんは捜査員を自宅に入れなかった。

弁護士によると、捜査員は翌8日の夜にも再びスリニバサンさんの自宅にやって来た。ほぼ同時刻、コロンビア大学で抗議デモにかかわったパレスチナ人大学院生のマフムード・カリルさんが、同大キャンパス内の自宅で拘束された。カリルさんは永住権を持ち、妻は米国人。今もルイジアナ州のICEの施設に勾留されている。

弁護士によると、スリニバサンさんの自宅を訪れた捜査員は令状を持っておらず、スリニバサンさんと接触できなければまた来ると脅したという。

11日までにスリニバサンさんは、米国からカナダへの出国を決意した。

「私は勉強するため米国に来た。米国の大学は、報復を恐れずに学び、政治的論議に参加できる場であり、私はただ、自分が始めた学業を修了したかった」とスリニバサンさんはコメントしている。

国土安全保障省(DHS)のクリスティ・ノーム長官は先週、スリニバサンさんが出国に向けて空港を歩く姿をとらえた映像をX(旧ツイッター)に投稿し、スリニバサンさんが税関・国境警備局(CBP)のアプリを使って「自主国外退去」したと主張した。

弁護士はスリニバサンさんについて「何も悪いことをしていないのにDHSが不法に学生資格を取り消したことを受け、15日以内の出国を定めた米国の法律に従って出国便を予約した」と指摘。「彼女がCBPアプリ経由で『自主国外退去』したというDHSの虚偽の主張自体、この政権が事実ではなくでっち上げを根拠に彼女を標的としていることを物語る」と反論している。

DHSは先週、米市民権を持たない人物が「米国にとって外交政策上重大な悪影響を及ぼし得る」と判断した場合、国務長官に行動の権限が与えられるとしたあいまいな法律に従って、スリニバサンさんのビザを取り消したことを確認していた。

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