シリアの「救急車の少年」、政権側のメディアに登場
(CNN) シリア北部アレッポで昨年、がれきの中から救出された場面の映像が注目を集めた少年、オムラン・ダクニシュ君がこのほど、再びメディアに登場した。今度はアサド政権側の報道機関が撮影した映像で、父モハメドさんがインタビューに答えている。
オムラン君は昨年8月、政権側の空爆が続いていたアレッポ東部の反政府派地域で、自宅のがれきの下敷きになっていたところを救出された。ほこりと血にまみれ、救急車の中でぼう然と座る姿がインターネット上で大きな話題になった。
6日に放映された映像では髪をきれいに整え、元気そうな姿で国営メディアの取材に応じている。アサド政権を支援するレバノン、ロシア、イランの放送局がインタビューに加わり、それぞれの国でこの模様を放送した。映像はさらに、ネットを通じて世界各地に拡散している。
モハメドさんはロシア政府系通信社とのインタビューで昨年の出来事を振り返り、反体制派のグループや外国メディアが政治的目的のためにオムラン君の画像を利用したと主張している。
「息子が軽傷でよかった。政権軍がこの地域を奪還してくれてよかった。私たち家族も今は自宅に戻り、とても良い暮らしをしている」と語った。
アサド政権は情報統制が厳しいことで知られる。反体制派のジャーナリスト、ムサ・オマル氏はこのインタビュー映像について、モハメドさんは政権側から圧力を受け、指示通りの発言をさせられているとの見方を示した。
当時のアレッポからの情報によると、オムラン君の自宅は政権軍かロシア軍の空爆を受けたとみられていた。オムラン君は救助ボランティア組織「シリア民間防衛隊(通称・ホワイトヘルメッツ)」のチームに救出され、病院へ運ばれたがまもなく帰された。この空爆で数人が死亡し、女性や子どもを含む多数の負傷者が出たとされる。10歳だったオムラン君の兄も亡くなった。