東南アジアを覆う薬剤耐性マラリア、「世界的な緊急事態」の恐れも
(CNN) 治療薬に対して耐性をもつマラリアが、東南アジア全土で感染を広げている。専門家は「世界的な衛生上の緊急事態」に陥る恐れもあると警鐘を鳴らした。
22日の医学誌ランセットに掲載された報告によると、複数の薬剤に対して耐性をもつマラリアの原虫が進化して、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナムに拡散した。
マラリア対策には各国が取り組んでおり、アルジェリアやアルゼンチンは今年5月に根絶を宣言した。その一方で、症例数が急増している国もある。
マラリアの治療薬として広く使われている「DHA-PPQ」が効かなかった割合は、カンボジア西部で62%に上り、同国北東部で27%、ベトナム南西部で53%、タイ北東部では87%に達した。
耐性をもつマラリアの原虫は、2008年にカンボジア西部で感染が広がった。以来、進化や変異を続けて複数種類の原虫が出現し、近隣諸国に広がっているという。
1980年代にはクロロキンに対して耐性もつ原虫が東南アジアからアフリカに広がって数百万人が死亡した前例があり、今回もそうした事態の再来が危惧される。
研究チームでは、DHA-PPQに代わる治療法を確立する必要があり、耐性マラリアが世界的に広がる前に、根絶に向けた対策を促進しなければならないと呼びかけた。
マラリアはメスのハマダラカに刺されることによって感染する。予防も治療も可能だが、年間推定で43万5000人の死者が出ている。
マラリアの死者や症例数は2000~15年にかけて減少していたが、18年の世界保健機関(WHO)の報告書によれば、13カ国で症例数が急増し、16~17年にかけての症例数は200万例増えている。